寸志とは?意外と知らない渡す時、受け取る時のマナー
正社員としてお金を稼ぐにあたって、ボーナスや賞与に大きな期待を寄せている人も多いでしょう。
こうした臨時収入は懐事情を良くしてくれるだけではなく、仕事に対するモチベーション維持にも影響してきます。
一般的に夏・冬に支給される年2回のボーナスはよく知られていますが、「寸志」について知っている人はそう多くはないかもしれません。
ここでは、寸志についてボーナスとの違いやマナーについてご紹介します。
この記事のまとめ
・寸志や少しばかりの気持ちを金銭や品物で表したもの
・寸志の扱いにはマナーがある
寸志とは?
寸志の定義
寸志(すんし)という言葉は「ちょっとした贈り物」といったニュアンスで用いられ、一般的にいくらかの金銭や品物の事を指します。
元来「寸」という漢字は物の長さを表す日本の単位であり、メートル法に直すと約3cmです。
ここから転じて、寸は「わずか、ほんの少し」といった意味合いで様々な熟語などに盛り込まれています。
「志」は人の気持ちを表す言葉ですから、寸志は「少しばかりの気持ち」と言い換える事が出来るでしょう。
つまり、寸志とは送り手の「少しばかりの気持ち」を金銭や品物で表したものです。同じ意味合いで「心付け」と呼ばれる事も多いですので、併せて覚えておくと良いでしょう。
寸志の歴史
寸志の歴史は江戸時代にまで遡ると言われています。江戸時代には、武士の心の在り方を示した指南書として「葉隠」と呼ばれるものがありました。
葉隠の中では「志を松の葉に包む」という教えが記されています。これは「お世話になった人へ感謝の気持ちを伝えるには、松の葉のように小さなものでも心がこもっていればそれで良い」という考え方です。
江戸時代からやり取りされていた寸志は、こうした日本人の奥ゆかしい物の考え方に由来すると言っても良いでしょう。なお、こうした考え方を汲んで、現代でも寸志を「松の葉」と表現する事があります。
「ご厚志」や「ご芳志」に注意
寸志と似ている言葉に「ご厚志」や「ご芳志」といったものがあります。
ご厚志は「手厚い思いやり」、ご芳志は「相手に対する敬意」といった意味合いです。
寸志は送り手が「わずかながらの気持ち」としてへりくだった表現となっているのに対して、ご厚志・ご芳志は受け手側から見た送り手に対する尊敬や感謝の念を示しています。
つまり、寸志は「送り手」が、ご厚志・ご芳志は「受け手」が使用する言葉ですので間違えないようにしましょう。
寸志はどんな時にもらえる?
寸志は、結婚式や葬儀などでお世話になった業者のスタッフや手伝ってくれた友人・知人などに渡す事も少なくありません。ビジネスの世界では、一般的に次のような場合に寸志が支給されますので覚えておきましょう。
会合などの場面で幹事に対して
勤務先にもよりますが、就職して企業務めになると会社内で歓送迎会や懇親会といった機会が多くなります。
こうした会合の場では幹事が会場の予約や出欠確認、会費の徴収や管理を任される事になるでしょう。
この際、上司から幹事である部下へ「会費の足しにして欲しい」という意味で寸志が渡されるケースは珍しくありません。
単純に幹事をこなしてくれた事に対しての労いを込めて寸志が支給される場合もあります。
会合における寸志の相場は5,000~1万円程度です。会費制であれば、会費の設定金額よりも気持ち多めに包んでおくのが一般的となっています。
また、会合で寸志を渡すのは上司だけとは限りません。
例えば、転職によって退職してしまう同期社員を送り出す会のような場合には、会を開いてくれた同期社員に対して主賓が寸志を配布するというケースもあります。
稀ですが、懇親会などでは会費を徴収しない代わりに、参加者が幹事に寸志を渡す形を取る場合がありますので知っておきましょう。
会社から社員に支給される寸志
冠婚葬祭や会合の場では個人から個人への寸志の贈与になりますが、会社が従業員に寸志を配布するというケースもあります。
感覚的には、年2回のボーナスや賞与に近いものだと考えて良いでしょう。
寸志もボーナス・賞与も月々の給与とは別に支給されるお金という点では共通しています。ただし、寸志はボーナスほどの金額をもらえる訳ではありませんので、注意が必要です。
一般的に、ボーナス・賞与の相場は中小企業なら給与の1ヶ月分、大手企業の場合は給与の2.5か月分程度とされています。勤続年数や個人の成績によって多少金額が上下するのが通例です。
一方、会社から支給される寸志の相場は1万~10万円前後となっています。会社からの寸志は、ボーナス・賞与の代わりとして支給される場合が多いです。
例えば、入社1年目でボーナス支給条件を満たしていない従業員に対して、心ばかりの手当として贈られるというケースはよく見られます。
また、求人情報を眺めていると待遇欄や備考欄に「寸志あり」と記載されている事があります。
この場合、初年度の夏・冬どちらかあるいは両方のボーナスが寸志に置き換わるという意味合いで記載されていることが多いです。
ただし、詳しい内容は企業によって異なりますので、不安な場合は掲載元企業や紹介元である私たちのような転職エージェントに問い合わせてみてください。
ボーナス、賞与との違い
会計上の処理に違いはない
寸志やボーナス・賞与は通常の給与とは別で支給される特別報酬であるという点では同じです。会社の経理会計上でもほぼ同様に扱われています。
例えば、これらの金銭は基本的に消費税が課されない非課税取引です。
また、寸志もボーナスも金額に関わらず所得税・社会保険料・雇用保険料の課税対象になっているため、源泉徴収が発生する点には注意しておきましょう。
社会保険料は寸志やボーナスの金額によって、所得税率は前月の給与や家族構成(主に扶養の有無)などによって変動します。
例外的な寸志の会計処理
寸志は、例外的に会計処理上で「接待交際費」として分類される事があります。これは社内の従業員ではなく、取引先や関係企業などの人に寸志を渡した場合です。
接待交際費として認められるのは接待・贈答・供応・慰安などですが、寸志はこの中の贈答に当たります。
基本的には個人ではなく、企業が法人として寸志を配布するケースがほとんどでしょう。社内の従業員に渡す場合同様、基本的に消費税がかからない非課税取引となっています。
由来には違いがある
前述のように、寸志は江戸時代の葉隠による教えが由来となっていますが、ボーナス・賞与は違います。
年に2回支給されるボーナス・賞与は、江戸時代の商家における「仕着せ」に由来すると言われています。
仕着せは「主人が家来に対して季節ごとに衣服を与える」という習慣の事です。しかし、時代が進むに連れて衣服に加えて夏・冬の年2回ほど金銭が与えられるようになりました。
夏場は商家に仕えていた奉公人がお盆休みで実家へ帰省するため、主人が奉公人に対してお小遣いを持たせるようになったとされています。
これが夏のボーナスの起源です。冬場のお正月に帰省する奉公人に対しては「餅代」という名目で金銭が支給されるようになり、この習慣が現在の冬のボーナスとして残りました。
このように「会社からの特別報酬」という点では共通していても、寸志とボーナス・賞与は起源が異なります。
寸志に関するマナー
寸志はお金に関わる事であるため、渡す側も受け取る側も社会人としてのマナーを押さえておく事が大切です。想いもよらぬところで失礼がないように、ここで寸志のマナーについて確認しておきましょう。
渡す側のマナー
使用する封筒について
寸志を渡す際は、現金を封筒に入れて渡すのが最低限のマナーです。
自分が上司となった際に部下へ寸志を渡す場合でも、そのまま現金を手渡ししないようにしましょう。
寸志に使用する封筒は、一般的にビジネスシーンであれば「白封筒」、結婚式などの慶事であれば「のし袋」とされています。
お祝い事の場合は「良い事が重なるように」という意味合いから、花結びののし袋が用いられる事が多いです。
ビジネスシーンでのし袋を使用しても問題はありませんが、水引の付いていない白封筒が無難と言えるでしょう。
封筒の表書き
受け取った側が「誰からの封筒なのか」「中身は何なのか」をすぐに把握出来るように、現金を入れた封筒には表書きを記しておくのがマナーです。
寸志の表書きは基本的に黒い濃墨の筆ペンもしくは筆を使用します。これは慶事なら濃墨、弔辞であれば薄墨を使用するというマナーに則るためです。
表書きは封筒表面の中央よりやや上、水引が付いているのであれば水引の上部中央に「寸志」と記しておきます。
封筒下部には送り主の名前を記載しますが、複数人の連名で寸志を渡す場合には注意が必要です。会社内の従業員で連名にするのであれば、年齢・役職の高い順で右側から名前を書きます。
夫婦の場合は夫の名前を先に、友人・知人での連名であれば五十音順で問題ありません。
連名が4人以上になるようであれば代表者1人の名前を記入し、左側に「外一同」としておくと受け手が読みやすくなるでしょう。
封筒裏面には寸志として包んだ金額を「金○○円」といった具合に記しておくのが一般的です。
寸志を渡すタイミング
会合や慶事などで寸志を渡すタイミングは、原則的に「会が始まる前」とされています。
これは会の途中や直後は会計担当者が費用の集計・計算を行っている可能性が高く、寸志を渡すとお金の管理が複雑になってしまい、負担をかけてしまうためです。
予期せぬトラブルを避けるためにも、寸志はなるべく早い段階で渡すようにしましょう。
また、寸志は「ちょっとした気持ち」というへりくだった姿勢が根底にありますので、周囲から見て目立たないようにサッと相手へ渡すのがスマートなやり方です。
受け取る側のマナー
寸志は「目上の人」が使用する言葉
寸志には、原則として「目上の人が目下の人に対して渡すもの」という性質がある点には十分注意しましょう。
部下が上司に金銭あるいは品物を渡すというケースも無い訳ではありません。
しかし、この場合は「寸志」として渡すのは不適切であり、かえって失礼に当たります。上司に宛てる場合は「御挨拶」「御礼」「粗品」といった言葉をケースバイケースで用いましょう。
寸志の報告について
会合や慶事などで寸志を受け取った場合、会場内に報告するというのもマナーとなっています。
ここで注意しておきたいのは、報告の際に「寸志」という言葉は使わないという事です。
前述のように、寸志は「送り手」がへりくだって使う表現であるため、受け手が使う表現ではありません。
寸志をもらった報告をアナウンスする際には「○○様よりご厚志を頂戴致しました」「お志を頂きました」などの表現を使うようにしましょう。
なお、寸志の具体的な金額を報告するのはマナー違反となるので厳禁です。
寸志に対するお礼が出来るとベスト
必ず守るべきマナーではありませんが、寸志をもらった場合は後日お礼を返すのがベストな対応だと言えるでしょう。
会社の上司のように普段の仕事場で一緒に働く間柄であれば、後日顔を合わせた際に「先日はご厚志を頂きましてありがとうございます」と一言お礼を言っておくと好印象です。
社内の人間でも部署違いで中々会う機会が無いのであれば、メールで感謝の気持ちを伝えるのも良いでしょう。
ただし、あくまでビジネスメールである事を意識して砕けた言い回しは使わないように注意が必要です。
また、寸志をもらった事だけについてメールを送付するのは不躾であり、マナー違反とされています。
お礼のメールは挨拶・出席や協力のお礼・寸志のお礼・結びといった具合に構成をしっかり考えましょう。こうしたお礼のメールは寸志をもらった翌日までに送るのがベターです。
取引先など社外の人から寸志をもらったのであれば、後日菓子折りを持ってお礼に伺うのも1つの選択肢となります。
先方が手隙の日時を狙って行く必要がありますのでハードルは高いですが、今後の良好な関係を築くために有効な手段です。
菓子折りが高価過ぎるともらった寸志が見劣りしてしまいますから、あまり豪華な菓子折りは選ばないようにしましょう。
まとめ
寸志の本質は「ちょっとした思いやり」であり、人間の気持ちを形にしたという意味合いが強い習慣です。
マナーについて正しく理解しておく事で、社内外を問わず良好な人間関係を築けるようになるでしょう。
また、寸志については明確な取り決めがある訳ではありませんので、企業によって扱い方も様々です。
中には、会合で寸志を渡す事が習慣化している企業もありますから、企業風土や習慣については就職・転職前に可能な限り調査しておくようにしましょう。
こうした企業内部の雰囲気は求人情報に目を通すだけでは中々掴めません。お金に関する事ですから、企業説明会などでも質問しにくいという人は多いでしょう。
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