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【まとめ】初任給の平均はいくら?高い業界は?なぜ差が生まれる?

就職・転職エージェントとしての仕事上、よく聞かれるのが初任給についてです。多くの場合、初任給の平均や高い業界、差が生じる原因などに関する質問を受けます。

就活者の中で、初任給は企業を選ぶ際の大きなポイントとして注目を集めていると言えるでしょう。

本記事では就活時の参考になるよう、初任給の基礎知識や学歴での差、実際の手取り額などについて詳しくご紹介します。

初任給の平均は?

初任給とは新入社員に対して初めて支給される給与のことです。給与は基本給と手当で構成されているものであり、手取りとはまた異なります。また、基本給は産業や都道府県によっても違いがあります。

本記事では、主に厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)」のデータを基に解説します。それによると、大卒の初任給の平均は男女計で21万200円です。

対前年比では1.7%増加しています。ただしこれはあくまで平均値であり、様々な要素によって差が生じる点は覚えておく必要があります。

基本給

基本給とは文字通り、基本的な給与額のことです。基本給は毎月固定額が支給され、年齢や勤続年数、職種や職務能力などによって決定されるのが一般的です。

基本給の基準や決め方は企業によって異なります。初任給の額が同じ場合、基本給が低くて手当が多い企業よりも基本給が高くて手当が少ない企業の方がボーナスが多くなる傾向があります。

その理由は基本給を基にボーナスの額を決める企業が多いからです。もちろん例外は存在します。

中には成し遂げた成果によりボーナスを決定する企業もありますが、基本給は年収に直結する要素であり、多いに越したことはないでしょう。

求人情報を見る際、給与周りについては基本給を重視することをおすすめします。残業代を計算するときの基準値となるのも基本給ですし、退職金にも影響するからです。

またもう1つ知っておいて欲しいのが、基本給と固定給の違いです。固定されているという点では同じですが、構成要素が異なります。固定給には、基本給と共に各種手当が含まれていることが多いです。

そのため実際に給与を受け取った時、基本給表示の企業の方が固定給表示の企業よりも支給額は大きくなります。

手当

各種手当も初任給の額を左右する大事な要素です。求人をチェックするときには、手当の項目もよく見ておきましょう。給与に大きく影響するのが「時間外手当」です。残業手当とも言います。

1日8時間以上(休憩時間を除く)勤務した場合、超えた分に関しては時間外手当が支給されます。また、週に40時間以上働いた場合も同じです。

例えば月曜日から金曜日まで1日8時間勤務した場合、土曜日に働いた分は全て時間外労働となります。時間外手当は時給×1.25×時間外労働時間で計算可能です。

時給は1時間あたりの賃金のことで、基本給から割り出せます。

残業以外にも割増賃金となることがあります。具体的には、休日や深夜に働いた場合です。それぞれ「休日手当」と「深夜手当」といい、働いた時間に応じて支払われます。

時間外手当や休日手当、深夜手当に関しては、きちんと支払われているかどうか給与明細をよく確認するのが大切です。管理者に対して支払われる手当が「役職手当」です。

最初から管理者として入社する場合には、初任給にも含まれることがあります。扶養家族がいる場合に支払われるのが「家族手当」です。家賃の一部を負担する「住宅手当」という手当もあります。

役職手当や家族手当、住宅手当の扱いは会社により様々ですから、あらかじめ確認しておくのが大事です。

ここまで見てきたものとはまた別のユニークな手当を支給する企業も存在します。求人を見てどんな手当なのかよく分からない場合には、就・転職エージェントなどに相談すると良いでしょう。

初任給は産業・都道府県によって違う

産業による違い

・学術研究、専門・技術サービス業:22万7,200円
・情報通信業:21万8,100円

・建設業:21万6,700円
・卸売業・小売業:21万1,000円
・宿泊業・飲食サービス業:20万800円
・医療・福祉:20万6,900円

初任給は産業によっても変わります。大卒の初任給(男女計)で高いのが、学術研究、専門・技術サービス業(22万7,200円)や情報通信業(21万8,100円)です。

また、建設業(21万6,700円)や卸売業・小売業(21万1,000円)も21万円を超えています。逆に低めなのが、宿泊業・飲食サービス業(20万800円)や医療・福祉(20万6,900円)です。

ただし、初任給は低くとも時間外手当などにより手取りが多くなる可能性があります。

また産業は時代の流れに影響を受けるものですので、対前年比をチェックするのも大事です。例えば、医療・福祉は対前年比で2.7%増加しています。

都道府県による違い

・東京:22万500円
・千葉:21万1,700円
・神奈川:21万800円
・大阪:21万100円
・愛知:21万100円

・沖縄:17万5,000円
・宮崎:18万8,000円
・宮城:20万7,000円
・秋田:19万100円
・福岡:20万3,700円

都道府県によっても初任給は異なります。大学卒(男女計)の場合、初任給が多いのが東京(22万500円)です。

また、21万円を超えているのが千葉(21万1,700円)や神奈川(21万800円)、大阪(21万100円)や愛知(21万100円)です。

一方で19万円に届かない県も存在します。例えば、沖縄は17万5,000円で、宮崎は18万8,000円です。同じ地方でも初任給に差がある場合があります。

東北地方の場合、宮城は20万7,000円ですが、秋田は19万100円です。また、九州は福岡が20万3,700円なのに対し、宮崎は前述のように19万円に届いていません。

このデータだけを見ると、東京で就職するのが有利に見えるかもしれません。しかし、実際に生活するとなると話は違ってきます。というのは、住宅費や物価などに差があるからです。

また、特定の地方でなければ、職につけない業種もあります。初任給は確かに大事ですが、それだけで決断することはあまりおすすめできません。どのような人生を歩みたいのかを考え、トータルで判断するのが肝心です。

学歴別にみる初任給

初任給は学歴によっても差が生じます。その違いを理解し、人生設計に役立てるのが大切です。ここからも、厚生労働省の「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)」のデータを基に解説します。

【学歴別・平均初任給額】

大卒:21万200円
└男性:21万2,800円
└女性:20万6,900円

高卒:16万7,400円
└男性:16万8,900円
└女性:16万4,600円

【中卒・20~24歳の平均給与】

中卒:19万5,300円
└男性:20万7,000円
└女性:16万7,800円

※「平成29年賃金構造基本統計調査の概況」より

大卒

初任給の平均でも見たように、男女計の大卒の初任給は21万200円です。男女別にすると男性が21万2,800円で、女性が20万6,900円となっています。

男女差は5,900円ですが、注目しておきたいのは男女別の対前年比です。男性が1.3%増なのに対し、女性は2.1%増加しています。

女性は平成30年には前年を割り込んでいましたが、令和元年になって大きく上昇しています。男性の増加率は穏やかで、少しずつ増え続けているのが特徴です。

大卒の初任給は男女とも20万円を超えていますが、大学院を出た場合にはさらに多くなります。大学院修士課程修了の男女計の額は23万8,900円で、大卒よりも28,700円高いのは要注目ポイントです。

また男女別にすると、男性は23万9,000円で女性が23万8,300円です。このように、男女差がほとんどないのが大学院卒の初任給の見逃せない点だと言えるでしょう。

高卒

高卒の初任給(男女計)の平均は16万7,400円です。男女別では男性が16万8,900円で、女性が16万4,600円です。対前年比は、男女とも1.4%の増加となっています。

女性の場合は平成30年に2.5%増加していましたが、令和元年になって増加率が低下しました。とはいえ、平成27年の女性の初任給は15万6,200円だったので、順調に増えてきているのは確かです。

高卒と大卒の初任給には4万円以上の差があります。年換算では50万円ほど違ってきますし、ボーナスを含めるとより大きな差が生じます。可能ならば大学に進学し、卒業してから就職するのも良いでしょう。

もちろん価値観は人それぞれです。中には、高卒も大卒も基本的には変わらないという職種もあります。目指すべき目標が定まっているのなら、高卒で働くのも十分な選択肢となり得るでしょう。

また、高卒と大卒の間には高専・短大卒という学歴も存在します。高専・短大卒(男女計)の初任給の平均は18万3,900円です。

男女別では男性が18万4,700円で、女性が18万3,400円です。目指す進路や状況により、高卒のまま就職するのか短大進学か、あるいは大学卒業後に就職するのかを決めるようにしましょう。

中卒

厚生労働省の調査には、中卒の初任給という項目はありません。そのため、公的な中卒の初任給の平均は不明です。ただし、中卒の20~24歳の平均給与を知ることはできます。

「平成29年賃金構造基本統計調査の概況」によると、中卒の20~24歳(男女計)の平均給与は19万5,300円です。男女別では男性が20万7,000円で、女性が16万7,800円となっています。

ちなみに、同じ年代の高卒(男女計)の平均給与は19万4,500円です。

中卒の初任給は高卒よりも若干低い15万円ほどだという情報もありますが、肝心なのは現実の求人内容です。実際のところ、中卒でも月給22万円以上可能という求人は数多く見られます。

特に特殊な技術がものを言う職業ともなれば、頑張り次第では高卒や大卒に匹敵するほど稼ぐことも十分可能です。中卒の場合、初任給にはあまり捉われず、手に職をつけることを優先するのがおすすめです。

企業規模別の初任給

「令和元年賃金構造基本統計調査結果(初任給)」の中には、企業規模別の初任給という項目もあります。それをチェックすると、企業規模によって初任給が大きく異なることが分かります。

大企業

大卒(男女計)の大企業の初任給は平均で21万3,100円です。男女別では男性が21万5,900円、女性が20万9,700円となっています。

対前年比は男性が1.2%、女性が1.9%の増加です。高卒の場合は大卒よりも4万円以上少なく、男女計で16万8,500円です。

ちなみに男性平均が16万9,100円、女性平均が16万6,900円と男女差はそれほど大きくはありません。大学院修士課程修了では男女計で24万2,000円であり、高専・短大卒の場合は18万5,600円です。

大企業の初任給で注目したいのが大学院卒の女性の支給額です。基本的には女性よりも男性の方が初任給は多い傾向ですが、大学院卒は違います。

男性が24万1,600円なのに対し女性は24万4,400円です。研究分野にもよるでしょうが、大企業の場合は女性の方が男性よりも初任給は有利だということになります。

中小企業

厚生労働省では、中規模の企業と小規模の企業を分けて調査しています。中企業の大卒(男女計)の初任給は、20万8,600円です。

また、小企業は20万3,900円です。この2つを足して2で割ると、20万6,250円ということになります。この方法で男女別に計算すると、男性が20万8,550円で、女性が20万3,500という結果になります。

同じく高卒(男女計)は、16万7,350円です。男女別では男性が16万7,050円、女性が16万3,700円です。

これは中企業と小企業の値を平均したものですが、元のデータを合算せず、そのままチェックすると面白い結果が得られます。なんと高卒の場合は小企業の方が中企業よりも初任給が高くなっているのです。

男性の場合、中企業の初任給が16万7,600円なのに対し、小企業の初任給は17万1,800円です。また、大企業と比較しても小企業の方が高くなっています。

これには時間外手当などが関係してくると考えられるため、現場でバリバリ働くことが多い高卒の場合には小さな企業を選ぶのも良い選択と言えるでしょう。

ベンチャー企業

成長が期待できるベンチャー企業の場合はどうなのでしょうか。ある民間企業の調査によれば、ベンチャー企業の初年度の平均給与は27万円ほどとなっています。

厳密な意味では初任給とは言えませんが、参考にはなるでしょう。大企業よりも稼げる可能性があるというのは、とても魅力的です。

もちろん大企業には会社の安定性や社会的信用度など、優れた部分もたくさんあります。どちらを選ぶのかは就活者次第です。

ベンチャー企業でバリバリ稼ぐのも良いですし、大企業で着実に実績を上げるのも良い選択です。自分の力をより発揮できる環境を選び、成果を上げましょう。

初任給に開きがある理由

ここまで見てきたように、学歴や企業規模、産業の違いなどにより、初任給には開きがあります。なぜこのような結果になっているのでしょうか。それには、主に次の2つの要因が関わってきます。

学歴差を能力の差の一つとして見ている

最終学歴を個人の能力を図るための目安にする風潮は世界各国で見られます。日本も同様であり、学歴以外で人材の能力を図ることは難しいとされています。

しかし、価値観が多様化した現代では学歴だけでは能力は判断できないとも言われ始めています。実際にエンジニアなどに話を聞いてみると、出世に学歴はあまり影響がないと答える人が増えてきているのが現状です。

ところが初任給に関してはまだまだ学歴が影響力を保持しています。現に平成27年と令和元年を比較した場合、大学卒と高卒の初任給の差はより開いてきています。

具体的には、平成27年では4万1,100円差だったのが、令和元年には4万2,800円差まで拡大しています。

グローバル化していく中で、学歴至上主義がどう変わっていくのかはまだまだ分かりません。学歴が初任給に影響を与えていることを意識しつつ、個人のスキルも伸ばしていくよう努めるのが肝心です。

産業によって一人当たりの生産性が異なるため

サービスを提供する場合、サービスにかかる原価と一人当たりの生産性が利益を左右します。また、サービスの価格が高い方がより多くの利益を産みだします。

つまり一人当たりの生産性が高く、高価格で利益を出しやすい産業は初任給も高くなりやすいのです。社員一人当たりの生産性は、労働生産性と言い換えることも可能です。

総務省統計局の「平成24年経済センサス‐活動調査の分析事例」によると、労働生産性の高い産業は情報通信業や学術研究、専門・技術サービス業などとなっています。また、卸売業も同様です。

産業別の項目でもご紹介したように、これらの産業はどれも初任給の高いものばかりです。逆に労働生産性が低いとされているのは飲食サービス業や宿泊業であり、初任給の低い産業と一致します。

このように、労働生産性と初任給にはある程度の関連性があると考えることが可能です。より多くの初任給が欲しいのならば、労働生産性の高い産業を目指すのが良いと言えるでしょう。

初任給の手取りはいくら?

初任給を考える場合、欠かせないのが額面給与と手取りの関係です。額面給与とは、基本給に手当を合算したものです。

いわゆる総支給額と呼ばれるものであり、求人にはこの額が初任給として記載されている例が多く見られます。一見すると、この総支給額がそのまま手に入ると思ってしまうかもしれません。

ですが実際には違います。額面給与から税金や社会保険料などが引かれた額が支給されるからです。この最終的に支給される額を手取りと言います。

額面から控除されるもの

額面から控除されるものは、税金と社会保険料の2種類に分けることができます。

税金として引かれるのが、住民税所得税です。社会保険料の主なものは健康保険や厚生年金、介護保険や雇用保険などです。厚生年金の保険料の本人負担額は9.15%であり、給与の約1割となります。

健康保険については中小企業の場合、協会けんぽに加入しているのが一般的です。協会けんぽの保険料は都道府県で異なります。目安としては、給与の1割前後だと考えておくと良いでしょう。

雇用保険は給与の0.3%ほどです。これらのうち、初任給で引かれるのは所得税と雇用保険のみです。

実際の手取りはいくら?

ここでは、実際の手取りを学歴別でご紹介していきます。

【学歴別・初任給の手取り額 目安】

大学院卒:23万3,400円
大卒:20万5,370円
短大卒:17万9,670円
高卒:16万3,550円

大卒の初任給は男女計で21万200円です。雇用保険は建設や農林水産業などを除き、基本的に0.3%です。

そのため、大卒の場合には210,200円×0.003=631円が雇用保険代として給与から引かれます。所得税の目安は給与の2%ほどです。

大卒なら21万円の2%ですから、4,200円ほどが控除されます。初任給の場合は雇用保険と所得税のみが引かれるため、最終的には20万5,370円ほどとなります。

これが大卒初任給の手取りの目安です。高卒の初任給は16万7,400円ですので、同じ手順で高卒の手取りを計算すると16万3,550円が目安となります。

大学院卒の場合は23万3,400円が目安で、短大卒の場合は17万9,670円です。ここで覚えておきたいのが、初任給の次の月からは手取りが少なくなるという点です。

次の月からは雇用保険や所得税だけではなく、健康保険料や厚生年金保険料、住民税なども引かれるため、初任給の手取りよりも少ない金額となってしまいます。

その点を理解しておかないと、給料日に困惑してしまうでしょう。

1人で暮らすにはいくら必要?

1人で暮らす場合、まず考えなければならないのが家賃です。家賃は都道府県ごとに違います。

全国賃貸管理ビジネス協会の「全国家賃動向」によると、2021年7月時点での東京の相場は1部屋で6万8,702円です。大阪は5万5,079円で、福岡は4万7,998円となっています。

他の自治体の中には、4万円未満のところも複数存在します。また、総務省統計局の「家計調査(家計収支編)」によると、2021年4~6月期の単身世帯の平均的な食費は3万7,644円です。

同調査では全消費支出の平均を知ることもできます。大都市では15万1,910円で、小都市では14万2,777円です。

つまり、最低限これらの金額以上の手取りがあれば、1人で暮らしていけることになります。趣味や勉強などにお金を使いたい場合には、さらなる収入が必要です。

まとめ

学校を卒業して就職し、1か月頑張った後に手に入る初任給はとても嬉しいものです。自分の仕事や成果に対する報酬ですので、「これが自分の価値なんだ」と実感することもあるでしょう。

本記事で見てきたように学歴や産業により初任給には差があります。しかし、その差は社会人として仕事を始めれば努力次第で数年で埋めることも可能です。

「初任給が低い産業では無理なのでは?」と感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、そういった場合でも希少なポジションに就き、仕事に精を出すことで多くの収入を得ることは決して不可能ではありません。

学歴や業務に捉われることなくコツコツと成果を上げ、目標に向かって邁進するのが大事です。なぜなら市場価値を高めることで、より好待遇で働く機会を得られるようにもなるからです。

また年収アップの方法は1つではありません。転職することも選択肢に入ります。転職することで大きく年収を上げる人は、決して珍しくありません。

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