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退職金は何年目から貰える?制度の仕組みと注意点を解説!

退職時に退職金が支給されるか否かは退職者にとって非常に大きなポイントです。ただし、退職金はさまざまな条件によりもらえる金額が変わってきます。

「勤続何年目から退職金がもらえるの?」と疑問に思っている方もいるでしょう。そこで本記事では、退職金の概要や制度が普及した背景、制度の仕組み、注意点などを詳しくご紹介しますので、少しでもお役に立てれば幸いです。

退職金はどういった制度?

退職金とは、退職する従業員に対して退職時に雇用先から支払われる金銭のことです。「退職慰労金」「退職手当」とも呼ばれます。

日本における退職金の概念は実は非常に古く、江戸時代の「のれん分け」が始まりと言われています。商家が仕事を勤め上げ独立する奉公人に対し、同じ屋号を使う権利を当たえる文化がありました。

今でも飲食店がそこに勤続していた従業員の独立の際、屋号の使用を許可するなどのれん分けは行われているので、聞いたことがある方も多いでしょう。

そして、こののれん分けが時代の流れとともに変化します。明治時代に給与の後払いや失業補償、勤続中の強制貯蓄など、さまざまな形をとった後、第二次世界大戦後に現在の退職給付制度の土台が出来上がりました。

そのきっかけは1946年の電気産業労働組合の労働争議です。この争議の中で、生涯電気産業に従事した従業員に対し、定年退職時にその後10年間の生活保障を行う旨の暫定協定が結ばれました。

このことによって、ほかの多くの労働組合も退職金は賃金の後払い・生活保障の性格を持つものだと声を挙げ、一気に退職金導入の仕組みが浸透していきました。

この流れからわかる通り、現在の退職給付制度は終身雇用の考え方と共に広がっていったものなのです。実際、この時期に終身雇用制度も誕生し、退職給付制度とともに多くの企業が導入しました。

従業員に長く働いて欲しい企業側と、職場で安定して長く働きたいと考える労働者の希望が一致した結果、導入する企業が増えたとみられます。しかし、現在の退職給付制度は必ずしも終身雇用とは紐づいていません。

退職金が珍しいものでなくなったため、その意義や目的が徐々に薄れてしまったことも一因と考えられます。退職金は定年退職時だけでなく、自己都合で退職した際や解雇されたときなどにも支払われます。

なお、退職金と言うと正社員がもらえるものというイメージがあるかもしれませんがそうとは限りません。

雇用契約の内容に退職時に退職金を支払う旨が明記されていれば、契約社員やアルバイト・パートなど正社員以外の雇用形態であっても退職金は受け取れます。

また、退職金は必ずしも金銭でなければならないわけではなく、例えば土地などでの支給も可能です(とはいえ、正社員のみ金銭での支給が一般的です)。

また、退職金の受け取り方には「一時金」と「年金」の2種類があります。

一時金は退職時に一括の金額を受け取るものです。年金の場合は、原則60歳以降に、一括または定期的な支給で受け取ります。

そのほか、この仕組みをミックスしたような形として、一定額を退職時に一時金で受け取り、残額が後に年金として支払われるなどの方法もあります。

企業において、受け取り方法が複数用意されている場合は退職者が選択することもできますが、特定の受け取り方しか用意していない場合は選択の余地はありません。

退職金と一口に言ってもその仕組みはさまざまだということを覚えておきましょう。

退職金は何年目から貰える?

前の段落で、退職金は自己都合で退職したときや会社の都合で解雇されたときなど、定年に達しない時点で退職した場合にももらえると述べました。しかし、いつ退職しても退職金がもらえるとは限りません。

退職金を何年目からもらえるかは、それぞれの企業の規定によります。法律上何年目からでなければならないという決まりもないため、その会社のルール次第です。

1年目に退職した従業員に退職金を支給したとしても、会社の規定に則っていれば何の問題もありません。

ただし、厚生労働省の「平成30年就労条件総合調査」によると、退職手当の受給に必要な所用年数は「3年以上4年未満」としている企業が最も多く、全体の約半数を占めています。

つまり、3年以上勤務した従業員に対し退職金の支払いを認めている企業が一般的だということです。

退職金の計算方法

退職金を受け取る側が気になるのは、その計算方法でしょう。退職金は基本的に勤続年数が長いほど高額になるほか、退職の理由によっても異なります。

具体的には、自己都合よりも会社都合の方が退職金は高くなる傾向にあります。それでは、退職金の具体的な計算例を見ていきましょう。

中央労働委員会による令和元年賃金事情等総合調査の結果から、「大卒(総合職)事務・技術労働者」の勤続3年目における退職金のモデルをピックアップします。

会社都合の場合は給与の2.8ヶ月分、自己都合の場合は1.3ヶ月分です。例えば給与の月額が25万円だとすれば、会社都合での退職金は70万円、自己都合の退職金は32万5,000円ということになります。

同じ大卒総合職の勤続5年目のモデルを見ると、会社都合の場合は4.4ヶ月分、自己都合の場合は2.3ヶ月分となっています。

勤続年数3年と同じ基本給で考えたとしても、会社都合の場合の金額が110万円、自己都合の場合が57万5,000円です。

勤続年数3年時と比較してかなり金額がアップすることがわかります(実際は勤続年数が長くなると基本給が上がる場合もあるため、さらに計算例よりさらに退職金が上がる可能性もあります)。

このように、基本給の金額に会社で定めた月数を乗じて退職金を計算しているとう企業が多く見られます。

また、基本給に関わらず退職金は固定制にしている企業もあります。例えば勤続3年で退職した従業員には一律30万円を支給するなどです。

退職金制度は企業によってそれぞれ独自性が認められるため、労働者側は企業がどのような計算方法を設けているのかしっかり確認しておく必要があります。

退職金の相場は?

総務省統計局の「平成30年就労条件総合調査」によれば、退職理由別の退職金を月収換算をすると下記のようになっています。

これによれば、自己都合退職を除くと退職金の相場は月収の約40か月分前後であることがわかります。

ちなみに早期優遇退職(企業がリストラの一環として退職希望者を募るもの)では退職金の上乗せが含まれるため最も水準が高くなっています。

一方で自己都合退職では減額措置が取られるため、約30か月分を下回る水準となっています。

受け取れる退職金の額は企業の規定、企業規模、退職理由、勤続年数、学歴、業種などによって大きく異なります。

退職金相場をより具体的に知りたい方は下記の記事に6つのケース別でご紹介しておりますので、ぜひこちらも参考にしてください。

退職金の注意点

退職金は退職者にとって非常に大きな利益のある制度です。ただし、給付を想定する上で気を付けておきたいこともあります。

気に留めていなければ退職金をもらえなかったり、想定よりも低い金額を受け取ることになったり、予想外の事態に見舞われる可能性もあるため、ここでは退職金に関する主な注意点を見ていきましょう。

退職金にも税金がかかる

退職金は勤務先から支給される金額をまるまるもらえるというわけではありません。企業から労働者が得る収入なので、給与のように退職金にも税金がかかります。

税金が引かれることを考慮しておかないと、その後の自分の資金計画に狂いが生じる可能性があるので注意が必要です。

退職金にかかる税金は「所得税」「住民税」の2つになります。これらの税金は給与やボーナスを受け取る際にもかかるため、税の仕組みや計算方法をご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

しかし退職金はその他の所得と区別して課税されるため、税のかかり方に違う点があります。詳しくは下記の記事でお伝えしていますので、気になる方はぜひチェックしてみてください。

業績により受け取れる金額が変わる

退職金の相場は勤続年数や職種、学歴などさまざまな条件によって異なると先の段落で述べました。この相場通りの金額をこれから先、いつでも変わらず受け取れるかというとそうとは限りません。

退職金の金額は企業の業績によって変動する可能性があることを覚えておきましょう。言い方を変えれば、退職金を支出する企業の業績が悪くなれば退職金も減る可能性があるということです。

退職金は基本給の何ヶ月分にもなる場合があり、定年時ともなるとかなり高額が支給されることになります。

業績に問題がない企業であれば支払える金額でも、業績が悪化している中であれば退職金の支出が企業の経営にさらに大きなダメージを与えることになりかねません。

そこで、退職金の金額を変更することで業績に影響が出ないようにする企業もあるのです。もちろん、退職金は企業内の規定に沿った形で支給されなければなりません。

制度を無視した形で勝手に退職金を減らすことは、制度を導入した企業と言えど認められないでしょう。しかし、退職金制度自体を変更することなどもあり得ます。

雇用されている側からしてみれば、これまでの会社の規定でイメージしていた退職金額より低くなることに対し「話が違う」と感じるかもしれません。

退職金はそれまで勤め上げた従業員への単なるボーナスというわけではなく、これまで勤続してきた間の賃金の一部を後払いするものとも考えられるため、あまりにも逸脱した制度変更は認められない可能性もあります。

ただし、制度変更が絶対に認められないわけではないため、変更後の制度に従って退職金が下げられる場合も考えられます。

また、年金タイプの退職金は資産運用の利益の有無などにより、そもそも始めから変動を念頭に入れた仕組みになってるものもあります。

このように、退職金はいつでも約束されている金額ではないと意識しておかないと、いざ自分が退職するタイミングになって予想していた金額が受け取れず、今後の計画に大きな影響が発生する可能性もあります。

退職金制度を重視して仕事探しをするならば、制度の内容だけでなく、企業自体の業績に問題がないかなども見込み、総合的に検討した方が良いでしょう。

そもそも退職金制度がない会社も多い

退職時には当然退職金がもらえるものと考えている方は多いかもしれません。しかし、全ての企業に退職金制度が備わっているわけではないのです。

厚生労働省の平成30年就労条件総合調査によると、退職金制度を導入していない企業は全体の約2割となっており、5社に1社は退職金制度を設けていないということがわかります。

退職金制度がなければ退職金は一切支給されません。退職金の有無により、退職後の生活は大きく変化します。

例えばまだ働ける年代で退職する場合、退職金がもらえるなら退職後にもし次の仕事が決まっていない場合でも、金銭的に少し余裕が得られるため焦らず仕事探しができるかもしれません。

しかし、退職金がない場合は退職すればそれで収入が途絶えてしまいます。失業した場合は失業手当を受け取れますが、離職してから実際の手当支給を受けるまでには少しタイムラグがあるため、それまでの資金繰りに困る可能性もあります。

とはいえ、退職金が用意されていない場合にもメリットがいくつかあるため、気になる方は下記の記事も参考にしてみてください。

まとめ

退職金制度は働く人にとって非常に重要な制度です。現在勤務している会社に退職金制度がない場合や、制度があるものの内容に不満がある場合は、より制度が充実した会社への転職を検討するのも一つです。

勤続年数によって退職金額は大きく変わるため、気になったらすぐに行動し始めた方が良いでしょう。

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