短時間正社員とは?働く人のメリット・デメリットと保険の話
「仕事時間をもう少し減らしたい・・・」
「もっとプライベートを充実させたい」
このようにお悩みではありませんか?そこで本記事では短時間正社員制度についてご紹介いたします。
制度概要のほか、労働者にとってのメリット・デメリットや保険についてもお伝えしますので、少しでもお役に立てれば幸いです。
短時間正社員制度とは?
短時間正社員制度とは、フルタイム正社員と同等、もしくはそれ以上の意欲・能力があるにもかかわらず、「育児や介護と仕事を両立させたい」「定年後も働きたい」などの理由で仕事に長い時間を割くことが難しい人材が増えたことを受け、そういった方々がより活躍しやすくなるよう設けられた雇用形態です。
※フルタイム正社員・・・1週間の所定労働時間が40時間程度かつ無期労働契約を結んでいる正社員
厚生労働省「短時間正社員制度の導入・定着支援」によれば、下記のすべてに該当する人材が短時間正社員となります。
同資料によれば、短時間正社員制度は育児・介護と仕事の両立や定年後の働き方を応援することだけが目的で設けられたものではありません。
フルタイム正社員と同等の待遇のまま労働時間を短縮することで働く人のメンタル面を健康に保てるようサポートしたり、「フルタイムでは働けない、働きたくない」と考えている、あるいはパートタイマーとして働いているものの意欲や能力が高い人材にも正社員として働ける機会を提供したりすることで、仕事へのモチベーションを高め、離職を防ぎ、労働者がより活躍しやすい環境を提供することも目的であるとされています。
ちなみにアルバイトやパートなどのパートタイマーは有期労働契約を結んでいますが、短時間正社員は無期労働契約を結んでおり両者はこの点で異なります。
短時間正社員の給与は?
厚生労働省「多様な働き方の実現応援サイト」によれば、短時間正社員の給与の算出方法はフルタイム正社員と同じですが、所定労働時間(日数)が少ない分、全体的な給与はフルタイム正社員よりも低くなります。
短時間正社員の基本給は、同じ職種・役職の正社員の給与額から労働時間に比例して減給される仕組みです。
たとえば同じ職種・役職の人材で比較する場合、8時間勤務のフルタイム正社員の基本給が250,000円のケースにおいて6時間勤務の短時間正社員の給与は「250,000×6/8=187,500円」となります。
ただし、その他の諸手当に関しては短時間正社員もそれぞれの手当の支給基準にしたがって受け取ることができます。
ちなみに同じ職種・役職の人材で「目標」について比較する場合、”量”の観点では労働時間に合わせて減らす必要があるものの、”質”の観点では変えないのが原則であるとされています(ただし厚生労働省によればこれはあくまで原則であり、業務内容や性質、労働者本人の希望も考慮したうえで目標を設定する必要があるとされています)。
短時間正社員のボーナスは?
短時間正社員のボーナスについても同様で、算出方法はフルタイム正社員と同様です。
たとえばフルタイム正社員のボーナスの支給基準が「基本給の2ヶ月分」とされている場合、短時間正社員もこれと同様に基本給の2ヶ月分のボーナスを受け取ることができます。
ただし、短時間正社員は労働時間に応じて基本給が減額されているため、フルタイム正社員よりも受け取れる金額は少なくなります。
短時間正社員のメリット
さて、ここまでで短時間正社員制度の概要をお伝えしましたが、この制度のもとで働くことには具体的にどのようなメリットがあるのでしょうか?ここでは”働く人の視点”に立ってご紹介いたします。
ワークライフバランスを保ちやすい
まずはワークライフバランスを保ちやすいことが挙げられます。
上記でもお伝えした通り、短時間正社員制度は様々な理由で長時間働きにくい人材に対して設けられたものであり、仕事以外の物事にも時間を割けるという大きな利点があります。
たとえば育児・介護と仕事を両立させる必要があったり、持病があって長時間働くことが難しいなどの理由で就業時間に制約があったりする場合も正社員として働く機会を得られます。
こういった特別な事情がない場合でも、資格の取得などのスキルアップに時間を割けるほか、趣味やリフレッシュに時間を使えることでプライベートにおける人生の充実度を上げることも可能になります。
キャリアを継続させやすい
また、労働者がキャリアを継続させやすいメリットも短時間正社員制度には見られます。
仕事を続けたいと考えているにもかかわらず、結婚や出産などのライフイベントによってキャリアを中断せざるを得なかった方でも、短時間正社員なら仕事を辞める選択肢を取らずに済むなどの利点があるのです。
一時的に働ける時間が少なくなったとしても、キャリアを継続させることでそれまで培ってきた知見やスキルを無駄にすることなく、より活躍の場を広げるチャンスを掴みやすくなります。
短時間正社員のデメリット
メリットが大きい短時間正社員制度ですが、デメリットも見られます。
フルタイム正社員に比べて収入が低い
まずはフルタイム正社員に比べて収入が低いことが挙げられます。本記事の前半で具体的な計算例もご紹介しましたが、収入面だけで見るとアルバイトなどとさほど変わらない可能性があります。
とはいえ短時間正社員はアルバイトなどと違い、ボーナスや退職金を受け取れる、法定外福利厚生の恩恵に十分預かれるなどフルタイム正社員と同等の待遇を受けられるため、フルタイム正社員よりも収入が減ってしまう点を考慮しても十二分であるといえるでしょう。
重要な仕事を任されにくい
次に、短時間正社員にはフルタイム正社員に比べて重要な仕事を任されにくいデメリットも見られます。
短時間正社員はフルタイム正社員よりも労働時間が少ないため、責任者などのポジションや残業が生じるであろう大がかりなプロジェクトを任されにくい傾向があり、人によっては納得のいく働き方を実現できない可能性があります。
社内の理解を得にくい可能性がある
また、場合によっては社内の理解を得にくい可能性があることもデメリットとして挙げられます。
「こんなに忙しいのになんであの人は先に帰るんだ」「仕事全部片づけてから帰ってよ」などと周りから批判的な目で見られることがあるかもしれません。
周りの従業員が事情を把握している場合は問題ないかもしれませんが、人によっては、特に周りから何も言われていなくとも「自分だけ早く帰るのは申し訳ない」「繁忙期なのに自分だけ楽をしているようで後ろめたい・・・」と感じる可能性もあります。
時間に追われることがある
最後に、時間に追われることがあるデメリットもあります。
短時間正社員はフルタイム正社員よりも労働時間が短いことから目標となる業務量を少なめに設定されているとはいえ、場合によっては業務がなかなか片付かず時間に追われることもあります。
業務内容やペース配分は人それぞれのため一概には言えませんが、フルタイム正社員よりも常にスピード感を意識した働き方が求められることになる可能性が否めません。
短時間正社員の場合、保険はどうなる?
ところで、短時間正社員制度において保険はどのように適用されるのでしょうか?まずは広義の意味での”社会保険”について、前提知識を簡単に確認しておきましょう。
そもそも”社会保険”とは?
まず社会保険とは、国民が病気や加齢、介護や失業、労働災害などによるリスクに備えられるよう国が保険費用を負担してくれる制度を指します。
“広義の社会保険”は具体的に下記の(1)~(5)を指しますが、会社員を対象とする場合には(1)(2)が”狭義での社会保険”、(3)(4)は労働保険と呼ばれています。
短時間正社員に社会保険は適用される?
厚生労働省「短時間労働者に対する健康保険・厚生年金保険の更なる適用拡大に
係る事務の取扱いに関するQ&A集の送付について」によれば、1週間の所定労働時間と1ヶ月の所定労働日数がその職場のフルタイム正社員の4分の3以上(以下、4分の3ルール)である労働者には狭義の社会保険(健康保険・厚生年金保険)が適用されるとされています。
ただし令和4年10月1日より、上記の4分の3ルールを満たさない労働者であっても、下記の4つの条件を全て満たした場合には狭義の社会保険の被保険者になることができます。
(1)1週間の所定労働時間が20時間以上である
(2)月額賃金が8.8万円以上である
(3)学生でない
(4)厚生年金の被保険者数が常時101人以上の法人・個人の特定適用事業所、並びに国または地方公共団体に属するすべての特定適用事業所に勤めている
└101人未満の場合でも労使合意に基づいて申し出を行った場合は適用されます
└令和6年10月1日からはさらに常時51人以上の企業まで拡大する予定とされています
短時間正社員に労働保険は適用される?
次に、労働保険(雇用保険・労災保険)についてです。労災保険については雇用形態や所定労働時間に関係なく全員に適用されますが、雇用保険についてはより細かい規定が設けられています。
雇用保険は雇用保険法第6条により1週間の所定労働時間が20時間以上かつ31日以上雇用され続けることが見込まれる場合に適用されます。
ただし、厚生労働省「「短時間正社員制度」導入支援マニュアル」によれば、今まで雇用保険の被保険者だった労働者が”育児のため”に1週間の所定労働時間20時間未満の勤務を行う場合で、かつその子供が3歳になるまでに20時間以上の勤務に移行することが前提の場合は、最長でその子供が3歳になるまで雇用保険の被保険者になる、とされています。
もっとストレスフリーに働きたいなら
さて、本記事では短時間正社員についてお伝えして参りましたが、いかがでしたか?ご自身の希望に合った働き方だったでしょうか?
もし今の働き方や業務内容、業務量が自分に合っていないなと感じている方は、これを機に改めて自己分析を行い、自分がどういった働き方を求めているのかを明確にしたうえで、それを実現できるであろう雇用形態や仕事を選ぶと良いでしょう。
ただ、それらを自分一人で行うには大変な手間と時間がかかるため、「場合によっては転職も視野に入れている」という方は転職エージェントを利用する方法が便利です。
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おわりに、「仕事探し」って実は難しくないんです
新たな環境に身を置こうと考えたとき、誰しも必ず「不安」と出遭うことになります。
本当に自分のやりたいことができるのか、よくない意味での「想像とのギャップ」はないだろうか、自分で務まる業務内容なのだろうか...。
「仕事探し」というものがとてつもなく難しいものに思え、孤独を感じている人もいるのではないでしょうか?
でも、「仕事探し」って実は難しくないんです!
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