今の仕事はやりがい搾取?やりがい搾取が起きやすい仕事や取るべき対策を解説!
労働者の気持ちを利用し、経営者が不当な条件を押し付けてくる「やりがい搾取」は問題になっています。就職活動や転職活動をするときは、やりがい搾取を行っていない、健全な企業を選ぶようにしましょう。
また、やりがい搾取が起きやすい業界や職場環境を調べておくことも大切です。本記事では、やりがい搾取が生まれる条件や対策についてご紹介いたします。
やりがい搾取の定義
“やりがい搾取”という言葉には明確な定義はありませんが、一般的に「やりがいを押し付けることで、上司や経営者が労働者に給料以上の仕事をさせる行為」という意味で使われています。
たとえば、普通の職場では決められた労働時間の中で、従業員は与えられた仕事だけをこなします。仮に残業が発生したり休日出勤を命じられたりしたら、その分には特別な手当てが支給される仕組みです。
しかしやりがい搾取が横行している職場では、残業や休日出勤に対して手当てが支払われないケースも少なくありません。
職場から「お金の代わりにやりがいを感じられているのだから、納得しろ」と言い聞かせられて、従業員は従わざるを得ないのです。
やりがい搾取という考え方は東京大学大学院教育学研究科教授の本田由紀氏が2007年に定義した、「労働搾取構造」が根拠になっているとされています。
本田教授は低賃金や長時間労働といった、日本企業によく見られる問題の多くとやりがい搾取を関連付けています。つまり、やりがいを押し付けられているうちに、従業員は「この仕事が大変なのは仕方ない」と思い込むようになっていくのです。
しかし2019年には働き方改革関連法が施行され、日本人の労働環境への関心が高まりました。やりがい搾取への問題意識は日本全体で強まっており、解決に動き出している企業も増えてきています。
やりがい搾取が起きる背景
多くの企業でやりがい搾取が起きてしまうとき、主な背景は3つあると考えられます。以下、やりがい搾取の背景について説明します。
過酷な労働環境
労働時間が長かったり、作業そのものがたいへんだったりする職場では、やりがい搾取が頻繁に起こってきました。その理由は、企業側が「内部留保」を守りたいと考えてしまうからです。
内部留保とは、企業が使わずに貯蓄していくお金のことで「プール」とも呼ばれます。内部留保が多ければ、突然の不景気や損害が訪れてもすぐには倒産しません。さらに、内部留保を経営者や幹部の給料にまわすことも可能です。
しかし、従業員に正当な報酬を支払っていたのでは、内部留保を守りにくいでしょう。なぜなら、従業員が長くたいへんな労働をするほど、手当ては増えていくからです。
そこで、過酷な労働環境の企業経営者の一部は「従業員に手当てを払わなければ、内部留保を守れるのではないか」と考え始めました。こうして、やりがい搾取が起こるようになっていったのです。
また、単純に利益が少ない企業は、従業員に手当てを支払いたくても支払えません。そこで、「お金はないが、やりがいを提供している」という言い方で従業員への待遇を正当化しようとする経営者もいます。
ただ当然ながら、企業の財政状況に関係なく、従業員を無理やり長時間労働させることは違法行為にあたります。
価値観の違い
企業経営者と従業員の価値観が異なる職場でも、やりがい搾取は横行してきました。なぜなら、経営者のほうが立場が上のため、価値観が対立しても従業員を強制的に従わせることが可能だからです。
たとえば、「定時でかえってプライベートの時間を大切にしたい」という従業員がいたとします。しかし、経営者から「プライベートを大切にしたいのは甘えた考え方だ。社会人なら仕事に集中するべきだ」と言われれば、従ってしまう人は多いでしょう。
もしも経営者に逆らった場合、社内での立場を悪くする恐れが出てくるからです。
さらに、経営者や上司が自らの成功体験を部下に押し付けてしまうのも、やりがい搾取を招く状況だといえるでしょう。なぜそのような事態になるのかというと、「生存者バイアス」が発生するからです。
生存者バイアスとは、ある環境下で生き残った人たちが自らを特別視してしまう心理です。成功者は「自分にはできたから、ほかの人も同じようにすれば成功するはずだ」と考えます。
しかし、時代や労働条件が異なる環境下で成功者の論理を押し付けても、同じような成果が得られるとは限りません。むしろ、やりがい搾取で終わってしまうケースも多いのです。
そのほか、経営者や上司が従業員に対し、「サービス残業や休日出勤は当たり前」と思い込んでいる職場もあります。このような職場ができてしまうのも、働く人々の生存者バイアスが原因だと考えられます。
そして、価値観の異なる人間を強制的に従わせようと、やりがい搾取が常態化してしまうのです。
社内のコミュニケーション不足
経営者や上司に悪意がなかったにもかかわらずやりがい搾取が起こるのは、「コミュニケーション不足」が考えられます。すなわち、部下が悩んでいるときに相談できる人が見つからず、渋々現状を受け入れるしかなくなってしまう環境です。
コミュニケーション不足が起こる理由には、「忙しさ」が挙げられます。作業量が多い職場では、上司と部下がじっくりと話す機会をなかなか持てません。
お互いの気持ちを知らないまま、作業を分担し合うだけの関係になっている職場も少なくないでしょう。さらに、上司に余裕がなく、部下の態度に気づけていない可能性もあります。
次に、そもそも部下と上司が一緒の空間にいない職場でもコミュニケーション不足は頻発します。たとえば、お互いが外回りでオフィスにいなかったり、いずれかがリモートワークで働いていたりすると、顔を合わせる時間はほとんどありません。
部下と上司が価値観をすり合わせることもなくなります。その結果、部下は「無理やり働かされている」と感じるようになり、やりがい搾取へと至ってしまうのです。
そして、雰囲気が悪い職場でもコミュニケーションは行われにくくなります。上司が常に不機嫌だったり、言い争いが日常茶飯事だったりすると、部下は「話したくない」と考えるでしょう。
そうやって労働条件に関する悩みを打ち明けられずにいると、本人の働く条件はますます悪化していきます。
やりがい搾取が行われる会社の特徴
現在勤めている会社でやりがい搾取が行われていないか、改めて確認してみましょう。転職や就職活動中なら、志望先に不審な点がないか見極めることも肝心です。
以下、やりがい搾取が横行しやすい会社の特徴を挙げていきます。
理念などの思いを過剰に強調している
経営者や創業者の理想が不自然なほどに押し出されている企業は要注意です。なぜなら、上層部が現場をしっかり把握できていない可能性が高いからです。
普通の経営者なら従業員の数や能力を考慮したうえで、少しずつ企業を成長させていこうと考えるでしょう。しかしいわゆる「ブラック企業」と呼ばれる、労働環境を無視する会社の経営者たちは現場に関心がありません。
自分の思いを最優先しようとして、現場に無理難題を要求することも少なくないのです。経営者に言われるがまま、過酷な労働環境を現場が受け入れてしまうと、やりがい搾取が起こります。
あるいは、経営者が美しい理想論で現場の実態を隠そうとしているケースも珍しくありません。その理由は、正直に現場の環境を世間に伝えても、企業イメージを悪くするだけだからです。
過剰労働が当たり前になり、従業員を大切にしていない企業は取引先から評価されません。新入社員も集まりにくいうえ、現在の社員たちのモチベーションも上がらないでしょう。
そこで経営者は理想論を熱く語り、「仕事は過酷でも、世の中のために役立っている企業だ」という点を強調します。
ただ、あまりにも現実からかけ離れている理想ばかり発信しているようなら、その企業は不健全に経営されている危険があります。
対個人で仕事を行っている
顧客や利用者の顔が見えやすい、「対個人」の仕事でもやりがい搾取は起きやすい傾向があります。理由としてはまず、仕事を通じて従業員が充実感を覚えやすいからです。
たとえば、接客や販売の仕事は顧客から感謝の言葉をかけてもらいやすいです。目の前で顧客が笑顔になっていれば、幸せを感じることもあるでしょう。
そうしているうちに、「給料が少なくてもこの仕事を続けたい」という気持ちになりやすいのです。そして、悪質な経営者はこうした従業員の思いにつけこみやりがい搾取を行ってきます。
次の理由には、対個人の仕事は社会貢献の意識を持ちやすい点も挙げられます。代表例として、福祉や介護、医療などの関連企業では、やりがい搾取が少なくありません。
これらの仕事は世の中のためになくてはならず、働きながら他人に役立っている実感を得られます。つまり、経営者からすると、「お金よりも大切な経験ができているはずだ」と言い訳しやすいのです。
そのほか、音楽や映像、演劇といったエンタテインメントの分野には憧れを抱いている若者層が少なくなく、その業界で働けているだけで充足してしまう人もいます。
こうした従業員は「お金がなくても幸せだ」という発想になりやすく、経営者からの搾取を受けやすくなってしまうのです。
暗黙の了解でサービス残業が状態化している
暗黙の了解で従業員の大半が過酷な労働環境を受け入れている企業でも、やりがい搾取は頻発します。なぜなら、新しく入ってきた従業員も「これが当たり前なのだ」と思い込んでしまい、抗議をせずに働いてしまうからです。
また、抗議をしたくても、周囲の人間が条件を受け入れているので言い出しにくいケースもあるでしょう。そうしているうちに誰も労働環境を本気で変えようとしない空気が漂い、やりがい搾取が続いてしまうのです。
さらに、こうした職場では「長く働くのは努力の証である」といった、誤った価値観が蔓延していることも珍しくありません。従業員の多くがその価値観に従っている限り、残業をする人が称賛される社内文化は継続します。
反感を抱いた人は辞め、社内文化を肯定している人だけが残るので、やりがい搾取は解消されないままです。
サービス残業以外でも、やりがい搾取を行う企業は「徹夜で働く」「有休を使わない」などの理不尽な働き方が評価される傾向にあります。なぜなら、これらの独自のルールが守られていると、経営者にとって都合がいいからです。
従業員が暗黙の了解に従って働いてくれていれば、より過酷な要求もしやすくなります。そして、どんどん労働時間が長くなり、賃金は安くなっていくでしょう。
こうした企業に入ってしまうと抜け出すことすら難しい場合も多く、就職や転職活動の時点で避けることが重要です。
やりがい搾取を防ぐ為の対策
企業からやりがい搾取を受けないよう、個人でも自己防衛の策を身につけておきましょう。以下、3つの対策を紹介します。
経営者の意識を見極める
もしもやりがい搾取を受けていると感じたら、経営者の意識を確認しましょう。会社のホームページに書かれた経営理念や著作物などを読み返し、経営者が対外的にどのような発信をしていくのか探ります。
なぜこのような方法が効果的なのかというと、労働改善の意識の低い経営者ほど、理想と現実に大きなギャップを生み出していることが多いからです。
仮に崇高な理想を語っているにもかかわらず、従業員を大切にしていないようなら、その経営者は現場を把握できていないといえます。あるいは、過酷な労働条件を押し通すために、あえて美しい理想を語っている可能性もあります。
いずれにせよ、意識の低い経営者の下ではやりがい搾取が止まりにくいでしょう。いっそ、転職を考えるのもひとつの方法です。
自分でも労務管理をする
長時間労働や低賃金への対策として、労務管理の徹底が挙げられます。会社側に頼るのではなく、自分でも労働時間や給料の計算を行いましょう。なぜなら、これらのデータは企業側と交渉する際の証拠になるからです。
本来、適切な労働時間や賃金は労働基準法によって定められています。仮に企業が法外な労働条件を強制しているのなら、従業員には抗議する権利があります。
労働時間や残業代に関するデータが手元にあれば、企業との話し合いを有利に進めやすいでしょう。
社外に相談する
企業側が抗議に応じてくれないときは、社外の相談先に連絡するのが得策です。なぜなら、従業員自ら経営者と交渉するのは、精神的に大きな負担となるケースもあるからです。
また、「扱いにくい社員」と思われることで、不当な待遇を受ける可能性もゼロではありません。そうならないよう、客観的な立場の第三者に仲介してもらうと交渉はスムーズです。
労働問題については、労働基準監督署と労働局が無料の相談窓口を設けています。このうち、賃金や労働時間に関する問題は、主に労働基準監督署が担当しています。
一方、ハラスメントが絡んでくる際には労働局が対応してくれます。次に、有料相談を受け付けているのは弁護士と労働組合です。搾取された分の給料を取り戻したいのであれば、弁護士が力になってくれます。
社内の労働環境を改善させたいのなら、労働組合に状況を訴えてみましょう。ただし、いずれの相談先も、確実にやりがい搾取を止められるというわけではありません。すぐに状況を変え健康的に働きたいのなら、転職も視野に入れることが賢明です。
今の仕事がやりがい搾取と感じたら
人や職場によってはやりがい搾取に抗議することが難しいことも往々にしてあります。そういった場合には転職を視野に入れるのも一つです。
しかし、「今の職場を離れたい」という気持ちばかりが先行してしまい転職先選びを細かく行わなければ、また同じような悩みを抱えることになりかねません。
同じ失敗を繰り返さないためにも、自分が求める職場がどういったものかを具体的に考えたうえで仕事選びを行いましょう。もし自分一人で考えるのが難しい場合には、転職エージェントの専属キャリアアドバイザーに相談する方法がおすすめです。
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「もっと健全な環境で働きたい」「転職すべきか教えてほしい」という方はご相談だけでもかまいません。ぜひ一度私たちにお話をお聞かせください。
おわりに、「仕事探し」って実は難しくないんです
新たな環境に身を置こうと考えたとき、誰しも必ず「不安」と出遭うことになります。
本当に自分のやりたいことができるのか、よくない意味での「想像とのギャップ」はないだろうか、自分で務まる業務内容なのだろうか...。
「仕事探し」というものがとてつもなく難しいものに思え、孤独を感じている人もいるのではないでしょうか?
でも、「仕事探し」って実は難しくないんです!
仕事を決めるときに必要なのは「自分の良いところを武器に前向きにぶつかること」、言ってしまえばこれだけなんです。
「でも自分に良いところなんてないよ~…」なんて嘆いているそこのあなた!長所や強みは誰しも絶対にあります。可能性のある存在を否定するほどもったいないことはありませんよ。
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