深夜手当とは？

深夜手当とは、深夜にあたる時間帯に勤務することで加算される賃金です。法律上の正式名称は「深夜割増賃金」と言います。

深夜手当の支給対象となる時間帯は「22時～5時」と規定されています。

基本的にはこの時間帯に働いた場合、業種や雇用形態などに関係なく必ず深夜手当を支給しなければならないことが義務付けられています。

深夜手当の金額は、深夜手当が支給される時間の基本給の25%です。

夜勤手当との違い

深夜手当と似たものに「夜勤手当」というものがあります。夜間の勤務に対し支給される手当のことで、性質も良く似ています。しかしこの2つは大きく違うものです。

2つが異なる点は、法律に定められているか否かということ。深夜手当は法律に定められている賃金なので、支給対象となるような勤務が発生すれば、支払いは義務です。

一方、夜勤手当は法律上に規定されているものではありません。つまり、夜勤手当は雇用主の裁量によるものであり、支給しなくても法律違反にはあたらないということです。

深夜手当の計算方法

それでは深夜手当の具体的な計算方法を解説します。

ここでは、深夜も稼働する工場での勤務を想定し、雇用形態や法定休日に深夜労働した場合など、いくつかの状況別にみていきましょう。

時間給の場合の計算方法

工場勤務のアルバイトで、時給1,200円だと仮定します。19時から23時までのシフトに入るとしましょう。

この場合、22時から23時までの1時間は、深夜手当支給対象の時間帯にかかっているため、賃金が1.25倍になります。

つまり、この場合の賃金を計算すると、

19時～22時 → 1,200円×3時間＝3,600円
22時～23時 → 1,200円×1時間×1.25＝1,500円

合計5,100円ということになります。

なお、始めから深夜手当の発生する時間帯のシフトが前提になっているアルバイトは、提示されている時給に深夜手当が既に含まれている場合もあるので注意しましょう。

月給の場合の計算方法

月給制の場合も深夜手当の計算方法はアルバイトのパターンと同じく、時間給に乗じて算出します。

ただし、月額の基本給では時間給がはっきりしないので、まずは具体的な時間給を計算しなければなりません。

例として、工場勤務の正社員で基本給が25万円、住宅手当2万円、通勤手当(実費支給)1万円の雇用・労働契約を結んでいるとしましょう。

年間365日のうち、土日・祝日・年末年始・夏季の休日合計が年間125日で、1日の所定労働時間は9時から18時まで、休憩1時間をのぞく8時間と設定します。

この勤務条件のもと、18時から24時まで残業をしたとすると、割増賃金はどのように計算されるのでしょうか。

手順としては、まず雇用・労働契約上の所定内賃金を調べます。所定内賃金とは、基本給に基礎的な手当を加えたものです。

この例の場合は、基本給と住宅手当が所定内賃金にあたり、金額は27万円となります。次に基礎賃金を割り出します。

基礎賃金とは、所定内賃金から除外賃金を差し引いたものです。除外賃金は割増賃金を算出する際、所定内賃金からカットするよう法令に定められている賃金のことで、住宅手当はこの除外賃金に当たります。

つまり、この場合の基礎賃金は25万円となります。基礎賃金がわかったら、次は所定労働時間の計算を行います。

年間日数から125日の休日を引くと、年間勤務日数は240日と割り出されます。これを12月で割ると、1ヶ月の平均勤務日数は20日。

そこに1日あたりの所定労働時間8時間を乗じると、1ヶ月の労働時間数160時間が算出できます。

あとは、基礎賃金25万円を1ヶ月の労働時間数160時間で割ると、時間給が1,562.5円と算出されます。

それでは、算出された時間給に基づき、残業時の賃金を計算してみます。18時から22時までの4時間は残業手当が加算されます。

残業手当は勤務した時間の基本給の25％なので、1,562.5円×4時間×1.25＝7,812.5円です。

そして、22時から24時まではさらに深夜手当が支給される時間帯です。この場合、残業手当の割り増し分25％と深夜手当の割り増し分25%で、割増合計は50％になります。

つまり、1,562.5円×2時間×1.5＝4,687.5円となります。

法定休日に深夜労働した場合の計算方法

法定休日とは、労働基準法によって定められている最低限の休日のことです。具体的には最低でも週1回以上、または4週間で4回以上の休日を言います。

この法定休日に労働をした場合、休日手当として基礎賃金の35％を支払うことになっています。深夜労働だとさらに深夜手当の25％分の割り増しがあります。

例として、時間給1,200円で法定休日の19時から24時まで勤務したとしましょう。

19時から22時までは休日手当のみの対象となり、1,200円×3時間×1.35＝4,860円です。

22時から24時までは、休日手当にさらに深夜手当が加算されるため、1,200円×2時間×1.6＝3,840円となります。この勤務に対する賃金計は8,700円です。

深夜手当で稼げる仕事一覧

深夜労働が多い仕事であれば、深夜手当がどんどんつくので稼げます。ここでは、深夜手当で稼げる仕事をご紹介します。

居酒屋スタッフ

居酒屋は深夜帯に営業することが多いため、深夜手当を稼ぎやすい仕事と言えます。仕事内容はレジ・ホール・キッチン対応など。

店内が混雑すればその分対応に追われるため、一息つく暇もないほど忙しくなることもあり得ます。店舗が繁盛すれば、店を支えるスタッフの一員として手ごたえを感じられるのではないでしょうか。

また、居酒屋のスタイルによっては、仕事をしながらお客様と会話をする場面などもあります。

接客する機会がとにかく多く距離感も近いので、コミュニケーションに自信のある方や接客が好きな方はやりがいを感じやすいでしょう。

工場スタッフ

工場内で、製品の組み立てや検品、仕分け、梱包などの軽作業を行う仕事です。なお、役職が上がると、各セクションや製造スケジュールの管理などを任されることもあります。

工場は深夜稼働をしている場合も少なくないので、深夜手当を稼ぎやすいと言えるでしょう。単純作業を繰り返し行うため、業務に大きなアップダウンがないことがメリットでもデメリットでもあります。

刺激がないと感じる方もいれば、同じ作業が続くことで集中しやすいと考える方もいるでしょう。

細かな作業が好きな人や、物を見分けるのが得意な人は得意分野を発揮しやすいと考えられます。また、自分が製造に関わった商品が市場に並ぶことにやりがいを感じられるでしょう。

トラックドライバー

夜間に荷物を運ぶトラックドライバーも深夜手当で稼げる仕事の1つです。仕事内容は指定の場所から指定の場所まで荷物を運搬すること。

時間に間に合うようペース配分をしながら運転すること、交通事故に遭わないよう安全運転を徹底することなどが求められます。

長距離運転や暗く視界が悪い夜間の運転など、ドライバーならではの苦労もありますが、荷物を運び終えた時の満足感はトラックドライバーでなければ味わえないでしょう。

どこにいても自分の欲しいものを購入できる、そういった便利さは荷物を運ぶ人があってこそ成り立つもの。日本の物流を支えているという実感は、トラックドライバーの大きなやりがいでもあります。

警備員

警備員は、建物や敷地内などの見回り・警備を行う仕事です。

実際に現場を歩いて巡回する他、監視室でのモニターチェックや警備システム利用者からの電話対応など、室内での業務もあります。

深夜帯は人通りは少ないものの、不審者が発生する可能性の高い時間帯でもあるため、しっかり緊張感をもって業務にあたらなければなりません。

なお、途中で仮眠などをとる時間もあるので、眠気や体調をコントロールしながら仕事をすることができます。警備員の仕事は建物やその場所の安心安全に繋がっています。

自分の働きが多くの人の命や財産、生活を守るのだという使命感は警備員の大きなやりがいだと言えるでしょう。

コールセンタースタッフ

通販や事故保険など、深夜対応をしているコールセンタースタッフも深夜手当の多い仕事です。仕事内容は、オフィスでオペレーターとして電話対応を行うことです。

室内でデスクに座りながら行う仕事なので、肉体労働的な大変さは少ないでしょう。深夜帯は電話が少ない傾向にあるため、多忙になりにくい点もポイント。

したがって、コールセンターにありがちなクレーム電話の量もあまり多くはありません。また、人前に出る仕事ではないので、服装・髪型・メイクなどを自由に楽しみたい方にもおすすめです。

業務のほとんどが接客なので、コミュニケーションスキルを発揮できる方はやりがいをもって働ける仕事です。

深夜手当が支給されていなかった場合の対処法

もしかしたら、これまで深夜手当についてあまり意識していなかったという方もいるかもしれません。

｢なんか給料少ないような･･･｣と感じて自分で計算してみた結果、深夜手当が未払いだったというケースも考えられます。

そのような場合は支払いを請求することができます。どのような方法で解決すればいいのかを説明していきます。

深夜手当は請求できる

本来支払われるべき深夜手当が未払いにある場合、労働者は当該深夜手当を雇用主に請求することができます。

ただし、労働者自身が直接雇用主に請求をしても、すんなり応じてもらえる可能性は高くはありません。そのような場合は、弁護士を通して深夜手当の請求を行う方法があります。

法律のプロである弁護士は、こうした労働問題に関しても知見を有しているため、スムーズに手続きを進めてくれます。

労働者と雇用主の間で拗れされるよりも、弁護士に依頼して処理してもらった方が無駄がなく、効率的だとも考えられます。

なお、深夜手当の請求のためには、当該深夜手当の対象となる勤務をしたという証拠が必要になります。タイムカードや給料明細などはしっかり保管しておきましょう。

深夜手当の請求方法

それでは、未払いの深夜手当を実際に請求する場合、どのような手順を踏むことになるのか、具体的な方法を説明します。

まずは未払い深夜手当の請求について、弁護士に相談します。先に述べた通り、労働者が雇用主に直接請求することもできますが、取り合ってもらえない可能性もあります。

できる限りスムーズに手続きを進めるなら弁護士を頼った方が無難です。依頼をすることになれば弁護士費用がかかりますが、初回の相談は無料で行っている事務所もあります。

弁護士は深夜勤務の裏付けとなる資料などを元に、労働者に代わり雇用主へ未払い深夜手当の請求を行います(場合によっては、雇用主へ依頼人の勤務状況の開示などを求めます)。

請求に応じ、未払い分を労働者に支払えばそれで完了です。しかし、雇用主が「勤務を命じていない」などと反論し、請求に応じないケースもあります。

弁護士を通した請求にも応じてもらえない場合、労働審判を起こすという方法もあります。労働審判とは、労働問題を解決するための法的手続きのこと。

証拠書類とともに申し立てを行い、裁判所で法的な判断をしてもらいます。一定の強制力があるため、会社側に話を聞いてもらえない時などに効果的です。

ただし、労働審判の調停に会社側が異議を申し立て、訴訟などに発展する可能性も0ではないので、進め方についてはよく弁護士と話し合いながら決めた方が良いでしょう。

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おわりに、｢仕事探し｣って実は難しくないんです

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