経歴詐称がバレるとどうなる?経歴詐称に該当するケースとうっかり詐称の防止策
今後の人生を左右する採用試験では、誰もが出来るだけ自分を良く見せようと努力するでしょう。
しかし、度が過ぎて虚偽の申告を行うと、後々経歴詐称を指摘されてしまうケースがありますので注意が必要です。
経歴詐称は故意ではなく発生するケースもあるため、出来るだけ意識しておきたいポイントです。今回は、経歴詐称のあれこれについて詳しく見ていきます。
経歴詐称に該当する項目とは?
履歴書や職務経歴書などは様々な記入項目が用意されていますが、虚偽の内容を記載すると経歴詐称になるものとそれほど重視されないものに大別されます。
まずは、どのような項目で正確な内容の記入が求められているのかを把握しておきましょう。
経歴詐称に該当する項目
虚偽の申告が経歴詐称に該当する可能性が高い項目には、次のようなものが挙げられます。採用担当官も注意深くチェックしているポイントですので、しっかり押さえておきましょう。
学歴
学歴は経歴詐称の代表例としてよく知られています。卒業校が採用試験の合否に大きく影響を及ぼすというケースは少なくなっていますが、少しでも自分を良く見せようと母校よりも偏差値の高い学校の名前を記入すると経歴詐称になります。
また、求人によっては求める最終学歴を大卒・専門学校卒に設定してる事がありますが、応募条件を満たすために高卒にも関わらず大卒と記入したり、大卒を専門学校卒とする事も経歴詐称に当たりますので十分に注意しましょう。
さらに細かい事を言えば、留年や浪人を誤魔化すために入学・卒業年度を偽るのもNGです。大学中退の場合は大卒扱いにならないという点にも注意が必要です。
職歴
学歴と並んで経歴詐称が多い項目が職歴です。経験者優遇の求人へ応募するにあたって、実際は未経験にも関わらず関連業界での職務経験があるように記入するというのが多い例です。
入社した事実の無い職歴を記入するのはもちろんですが、転職回数を誤魔化すために職歴を少なく書いたり、早期退社した会社での在籍期間を長めに記入するといったことも経歴詐称に該当します。
雇用形態
職歴に関連する経歴詐称としては、雇用形態も要注意のポイントです。例えば、アルバイトやパートとして働いていたにも関わらず、正社員雇用であったと申告するといったものが挙げられます。
逆に、正社員雇用で早期退社した職歴を短期のアルバイト勤務にして取り繕うというパターンも少なくありません。どういった雇用形態・契約で働いていたのかは正確に記入するようにしましょう。
実績・職位
これまでの仕事における実績や職位を偽る事も経歴詐称と見なされますので注意が必要です。月間営業成績トップを達成した、プロジェクトリーダーに任命されたといった詐称が分かりやすい例として挙げられます。
実績や職位は一見バレにくそうに見えるかもしれませんが、入社後の仕事ぶりで能力やスキルをチェックされると明らかになる可能性が高いです。また、こうした実績や職位の詐称は正社員だけでなく、アルバイトやパートとしての経歴にも同じ事が言えますので留意しておきましょう。
年収
年収は所属企業や自身の能力によって変動するため、実際よりも多めに記入すると経歴詐称と見なされてしまいます。これは特に転職活動を行う際に注意しておきたいポイントです。
企業としては優秀な人材や即戦力を確保するために、転職希望者に対しては前職よりも良い給与や待遇を雇用条件として提示するケースは珍しくありません。
お金に直接関わる事であり、バレた際のリスクが高いですので、年収については残業代・賞与・各種手当てなどを含めてなるべく正確に記入しましょう。
保有資格・免許
ある程度の専門知識やスキルが要求される仕事では、求人への応募を資格保有者に限定している場合があります。
「入社した後に取得すれば良いだろう」「実際に資格の有無を確認される事はないだろう」といった理由から、取得していない資格や免許を記入するのは経歴詐称です。
専門的な技能資格やスコア式の試験はもちろん、普通自動車やバイクの免許を持っていないのに持っていると言うのも当然経歴詐称に当たりますので、絶対に避けましょう。
犯罪歴
少し特殊な例ですが、過去に犯罪を犯して逮捕・起訴・書類送検といった履歴がある場合は正直に記入するようにしましょう。
罪の軽い犯罪であっても例外ではありません。一般的な履歴書には「賞罰」という項目が用意されていますので、該当する場合はここに記入します。
経歴詐称に該当しない項目
履歴書や職務経歴書には、前述のような様々な経歴詐称の可能性が考えられます。しかし、一方で経歴詐称に該当しにくいとされているのが「退職理由」と「解雇理由」の2点です。
この2つに関しては一般的に詳しい事情を書き込む必要がないため、経歴詐称の原因にはなりにくいと言えます。
例えば、退職理由であれば「一身上の都合により」「契約期間満了のため」「会社都合により」など、簡潔にまとめておけば問題ありません。
解雇理由についても「普通解雇」「懲戒解雇」「リストラ」など、表面的な理由を記入しておくだけ良いでしょう。
ただし、面接の質疑応答で多少掘り下げられる可能性はありますので、最低限受け答え出来るだけの材料は揃えておくのがおすすめです。
なお、自己都合にも関わらず会社都合としたり、懲戒解雇にも関わらず普通解雇と記入した場合は経歴詐称に該当します。
私たちが転職サポートを実施している中で、「既往歴や休職歴は詳しく正確に記入すべきか?」という不安の声も少なからず寄せられています。
既往歴とは、過去にかかった病気・治療の履歴を示す言葉です。私たちはこの2点に関しては「基本的には詳しく書かない」というスタンスをおすすめしています。
既往歴や休職歴についてはデリケートな部分も多く、企業としても突っ込んで聞きにくいポイントです。アピールポイントには活用しにくい項目ですので、必要以上の内容は記入しないのが無難と言えるでしょう。
例外として、詳しく記入した方が良いのは持病や症状が完治していない場合です。
再発の可能性が高いようであればその旨を記入しておく事で、採用後のトラブルを未然に防げます。懸念事項を正直に記載している応募者は、企業側から見ても信用度が高いと言えるでしょう。
経歴詐称となるケース
ここまでご紹介したように、経歴詐称の可能性が高い項目は様々ですが、具体的にどのようなケースが経歴詐称に当たるのかまだ不安が大きいという人も多いでしょう。ここでは、経歴詐称のパターンを大きく2つに大別して解説します。
誤って詐称となってしまうケース
うっかり記入する内容を間違えてしまったというケースでも、経歴詐称と見なされてしまう可能性がありますので注意が必要です。
よくある例としては、学歴の入学・卒業年度や職歴の入社・退社年月、資格取得年月の間違いなどが挙げられます。履歴書や職務経歴書はスペースの都合上、元号を用いた表記が求められるのが一般的です。
平成と令和をまたぐような場合は特に注意しておきましょう。市販の履歴書には元号と西暦の早見表が付属しているものも多いですので、参考にしながら慎重に記入すると間違いを防げます。
人材派遣会社に登録していた経験がある人も、記入ミスに十分注意しましょう。派遣社員として働いていると派遣先企業への帰属意識が高くなりがちですが、実際に雇用契約を結んでいるのは派遣先企業ではなく人材派遣会社となっています。
そのため、派遣社員としての職歴は人材派遣会社の名前を記入するのが原則です。派遣先企業が複数ある場合は先頭に人材派遣会社の名前を記載し、その下に簡潔に派遣先企業の名前や職種を列挙していくのが良いでしょう。
故意による経歴を詐称するケース
故意の経歴詐称はある程度パターン化しているため、企業側に作為的な意図が見抜かれやすいです。
例えば、卒業校や入社企業を偽ったものや入学卒業・入退社の年を誤魔化した経歴詐称は企業も慎重に精査しています。
資格や免許については採用試験時点で取得していなくても、取得のための学習に取り組んでいる事はアピール材料になり得ますから、取得できていない場合は正直に伝えましょう。
当然ながら、まだ試験を受けていなかったり、結果が出ていないにも関わらず「取得済み」と記入すると故意の経歴詐称に該当します。
その他にも、歴任した職歴や業務内容、年収の水増しといった点は意図的な経歴詐称の定番項目です。
経歴詐称が発覚するのはどんな時?
「少しくらい見栄を張ってもバレないだろう」という認識から、つい経歴を詐称してしまったというケースは珍しくありません。
しかし、実際のところ企業が応募者の嘘を見抜くタイミングや方法はいくつも存在するため、経歴詐称が発覚する可能性は高いと言えます。経歴詐称は主に次のようなタイミングで発覚する事が多いです。
面接試験
企業の採用試験では一般的に面接が行われます。面接は、応募者から送られて来た書類を参考にしながら個別に質問を行うケースも多いです。
そのため、経歴詐称した履歴書や職務経歴書を深く掘り下げられた際の答えが噛み合っていないと、企業側から怪しまれてしまいます。
このケースでは過去の業務内容や資格など、記載内容が事実であれば経験や知識で答えられるはずの項目がバレやすいです。
経歴を詐称していないとしても、提出書類に記入した事に関する質問は想定して答えを用意しておくと安心でしょう。
前職調査・リファレンスチェック
前職調査とは、採用活動を行っている企業が応募者が勤めていた企業に問い合わせて勤務の有無や職位などをチェックする施策の事です。
リファレンスチェックも同様のアプローチで行われますが、実際の業務内容や実績など細かい内容を確認したい場合に用いられます。
前職調査は警備業界や金融業界などセキュリティ意識が高い企業で、リファレンスチェックは実力主義の風土が色濃い外資系企業で行われるケースが多いです。
実施のタイミングとしては、面接が終わって正式に内定を決める前が一般的となっています。
前職の上司や同僚から情報が聞き取られるため、経歴詐称が発覚する可能性は高いです。ただし、個人情報保護の観点からこうした取り組みは減少傾向にあるという点も留意しておきましょう。
雇用保険被保険者証の提出
入社する企業の規模にもよりますが、在籍期間や1週間あたりの労働時間など一定の条件を満たしていると雇用保険への加入が義務となるケースが多いです。
雇用保険に加入していた人が転職する場合は、切り替え手続きのために前職の雇用保険被保険者証を提出する事になります。
雇用保険被保険者証には被保険者番号・入社日・退社日などが記載されているため、職歴を偽っているとこの時点でバレてしまう可能性が高いでしょう。
年金手帳の提出
入社する企業によっては厚生年金への加入が必要になりますが、この時に年金手帳の提出を求められる事があります。
これは、企業側で行う加入手続きに基礎年金番号が必要になるためです。年金手帳にはこれまでの年金加入記録が記載されているため、加入歴と職歴の間に食い違いがあれば経歴詐称を疑われてしまうでしょう。
源泉徴収票の提出
「1年間で支払われた給与の総額」と「支払った所得税の金額」が記された書類を源泉徴収票と呼び、一般的には年末に各従業員へ配布されます。
企業では従業員が支払うべき所得税の正確な金額を算出するために、年末調整と呼ばれる作業を行うのが通例です。
転職した年の年末調整には前職の源泉徴収票が必要になるケースが多く、職歴を詐称していると源泉徴収票が用意出来ずに経歴詐称がバレる可能性があります。
経歴詐称がバレるとどうなる?
経歴詐称がバレてしまった場合、どういった対応を取られるのか気になる人も多いでしょう。ここからは、経歴詐称がバレた場合に考えられる処遇や実際に発生した経歴詐称の事例などを見ていきます。
経歴詐称がバレた場合の処遇
従業員の経歴詐称が発覚した場合の対応は、企業によってまちまちです。業務遂行や信頼関係に大きく支障を来たすと見なされた場合は内定の取り消し、既に就業中の場合は解雇が通達される可能性もあります。
転職エージェントを活用している場合は、基本的に強制退会となる覚悟をしておきましょう。また、経歴詐称が単なるミスなのか故意によるものなのかによっても処遇が変化する事があります。
記入ミスによる学歴や職歴の些細なズレであれば、大きな影響は無いと判断される可能性はあるでしょう。ただし、内定取り消しにはならなくとも企業側からの信用度は下がっていると予想されますので、入社後の仕事ぶりで挽回する意識を持っておく事が大切です。
故意による経歴詐称で内容が悪質だった場合は懲戒解雇となるリスクもあります。懲戒解雇は即日解雇で退職金も発生しないなど、従業員に課されるペナルティとしては最も重い部類です。
経歴詐称が企業の重大な損失に繋がった場合は、詐欺罪や私文書偽造罪・公文書偽造罪で企業が訴える事も可能となります。経歴詐称はデメリットやリスクが大きい行為ですので、正確かつ正直に申告する事を心がけましょう。
事例1.スーパーバッグ事件(昭和54年)
高卒以下が応募条件となっていた工場で、勤務していた従業員が実際は短大卒であった事が判明し解雇になっています。
その事に対する有効性の有無が問われた裁判では、東京地裁は「実際の学歴を下回る申告は解雇事由に相当する」という判決を下しました。学歴の逆詐称について罰則が認められた例として有名な事件です。
事例2.グラバス事件(平成16年)
ソフトウェア開発会社に勤める従業員がプログラミングスキルがあるように偽って入社した事を理由に解雇となった事件です。
就労上必要となるスキルを詐称した事によって、実際の業務に支障が出た事が問題となりました。スキルの有無は明確な判断基準の設定が難しいポイントですが、明らかな詐称はこのように裁判でも違法と認められています。
事例3.KPIソリューションズ事件(平成27年)
職歴を偽って入社したシステムエンジニアが経歴詐称を理由に普通解雇された事例です。
この一件で該当の従業員はスキルや実績を材料に、年収アップの交渉も行っていたとされています。そのため、企業への損害賠償も発生するなど、比較的重い判決が下されたケースです。
うっかり詐称の防止策3選
本人に作為的な意図が無かったとしても、うっかりしたミスで結果的に経歴詐称が発生してしまう可能性はゼロではありません。
予期せぬトラブルや信用失墜を招かないために、厳選した効果的な防止策を3つご紹介します。
応募書類は慎重に記載する
ケアレスミスで経歴詐称が発生してしまう原因の多くは、履歴書や職務経歴書の記入ミスによるものです。
基本的な事ではありますが、応募書類を丁寧に書く事が効果的な防止策であると言えるでしょう。特に学歴・職歴・資格取得日などで元号や数字を扱う項目は要注意です。
元号と西暦の対応表をしっかり活用しながら、1つ1つの記入欄を丁寧に埋めましょう。
学歴の書き終わり・職歴の書き終わり・全体の書き終わりのタイミングで記入ミスが無いかチェックするクセを付けておくのもおすすめです。それでも不安が拭えない場合は、家族や友人などの第三者に二重チェックしてもらいましょう。
経歴は自己PRでカバーする
経歴詐称は、自分のキャリアの対する自信の無さから手を染めてしまうというケースが多いです。しかし、採用試験で見られているのは経歴だけではありません。
採用担当官は応募者の自己PRにも高い比重を置いている可能性が高いですので、経歴に自信が無い場合は自己PRでカバーする方針に切り替えましょう。
例えば、秀でたスキルを持っていない場合は「これまでの活動や仕事をどのように進めて来たのか」「判断を下す上で心がけている事」などアクションに至るまでのプロセスに焦点を当ててアピールします。
ロジカルな考え方や魅力的な思考をアピール出来れば、採用担当官からの注目を集められるでしょう。一見マイナスに思えるような事でも、見方や考え方を変えてポジティブな方向へ持っていく姿勢が重要です。
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