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正しく残業代支払われている?残業代が出ない時の対処法まで解説!

残業をした場合、通常ならばその分の残業代が支払われることになります。しかし、せっかく遅くまで働いたにも関わらず、その分の残業代が出ていないというケースもあるのです。中には、「毎月遅くまで働いた日があるのに、残業代が出る月と出ない月がある」という人もいることでしょう。

今回は、残業代が支払われないケースや、本来支払われるべき残業代が支払われていなかった場合の対処法などについて解説します。

残業代が払われないケースはどのようなものがある?

労働基準法では、1日8時間、週40時間の法定労働時間というものが定められています。この法定労働時間を超えて労働者が働いた場合や、休日や深夜に労働者が働いた場合は、その時間に応じて通常の時給に割増率分が上乗せされた割増賃金を支払う義務があるのです。

割増率は通常の時間外労働の場合は25%、夜10時から翌朝5時までの深夜時間帯に働いた場合は25%、休日に出勤して働いた場合は35%、1ヶ月に60時間を超える時間外労働を行った場合は50%となっています。

複数の条件を満たした場合はそれぞれの割増率が合算されて計算され、例えば深夜に法定労働時間を超えて働いた場合は通常の時間外労働と深夜労働それぞれの割増率を合算した50%が最終的な割増率となるのです。

残業代が払われないことが違法にならないケース

基本的に、残業代は上記のように計算されて支払われますが、残業代が支払われないケースも考えられます。

ただし、ここですぐに「会社がサービス残業をさせている!」と思い込んではいけません。制度や職種、立場次第では、残業代が支払われない処理が正しい場合もあるからです。

例えば、一定時間の残業代が予め基本給に含まれている固定残業制を採用している場合は、就業規則や労働契約で規定された残業時間を超えない限りは、追加の残業代が出ません。もちろん、既定の残業代を超えた場合はその分の差額を支払ってもらう必要があります。

また、始業時間と就業時間を自分で決められる裁量労働制が採用されている職種では、実際の労働時間ではなく労使協定や労使委員会で定められた時間だけ労働したものとみなす、「みなし労働時間」で給与計算が行われるため、原則として残業代は出ません。

ただし、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合や、深夜および休日に労働した場合はその分の残業代が支払われます。

裁量労働制とよく似た制度にフレックスタイム制度がありますが、こちらは始業時間と終業時間が自分で決められて、なおかつ実際の労働時間で給与計算を行います。

このフレックスタイム制度では週や月、3ヶ月などの単位で総労働時間の精算期間が設けられており、その期間内の総労働時間が所定労働時間を超えた場合に残業代が支払われるのです。

例えば、精算期間を1週間、週の所定労働時間が40時間と定められている場合、月曜日から水曜日に2時間ずつ残業して、木曜日と金曜日は3時間早めに退勤した場合、総労働時間は所定労働時間と同じになるため残業代が支払われません。

もちろん、総労働時間が所定労働時間を超えていた場合は残業代が発生しますし、法定労働時間を超えた分や休日および深夜に労働していた分については割増手当も加算されます。

職業や職種、立場によっては残業代が出ないことが法律で定められているケースも存在します。例えば、労働者と経営者が一体となっている立場の管理監督者に対しては残業代が支払われません。

また、農家や漁師などといった天候や自然条件に左右される職業に従事している人は労働時間の管理が難しいため、法律で残業代計算を行わないことが定められています。

守衛や門番などといった身体・精神の負担が少ない監視業務を行う職業や、役員の専属運転手のような手待ち時間が多く、断続的に実作業を行う業務についても時間外や休日の割増手当が支給されることはありません。

そして、労働基準法の適用外である公務員は、個別に残業代が支払われることがないため注意しましょう。

以上のように、会社の制度や職業・職種、立場によっては適法かつ残業代が発生しないケースも存在する点には注意が必要です。就業規則や給与規定を見直しつつ、自分の労働状況を振り返って残業代が発生するかどうかを確認すると良いでしょう。

しかし、残念なことに、残業代が本来であれば発生している状況にありながら、会社から残業代が支払われないケースもあります。支払うべき残業代を会社が支払わない場合、その会社は労働基準法に違反していると思われるため要注意です。

残業代が支払われないことが違法となるケース

例えば、年棒制や歩合制を採用している会社が、これらの制度を理由に残業代は出ないと説明しているケースです。

年棒制は年単位で給料の額を決める制度、歩合制は仕事時間ではなく内容によって給料の額を決める制度ですが、本来はこれらの制度を採用していても、従業員の1日の労働時間が法定労働時間を超えた場合や、従業員が深夜・休日に労働した場合、会社は残業代を支払う義務が発生します。仮に支払われない場合は違法である可能性が高いです。

先述した固定残業制や裁量労働制、フレックスタイム制度といった労働時間に関する制度を会社が正しく運用できていないことが原因で、本来は残業代が支払われる条件を満たしていながら残業代が支払われないケースも考えられます。

「フレックスタイム制度だから残業代が出ない」「固定残業制を採用しているから追加の残業代は絶対に発生しない」という説明を勤務先から受けている場合は、勤務先側が認識を誤っている、あるいは制度を悪用していると思われるため注意しましょう。

詳細は後述しますが、実際の労働時間にかかわらずタイムカードを定時に打刻させたり、管理監督者としての要件を満たさない管理職の肩書きを従業員に付与することで残業代支払いを免れようとしたり、残業の指示を出していないと会社側が主張したりするといったケースも存在します。これらのケースに該当する場合は特に注意が必要となるでしょう。

持ち帰り残業の扱いは?

ちなみに、会社で終わらなかった仕事を自宅に持ち帰って引き続き仕事を行う「持ち帰り残業」については、ケースバイケースです。

上司から明確に「持ち帰ってやってくれ」という指示があったり、明らかに通常の業務時間で終わらない量の業務が課されており、暗黙の了解の元持ち帰って残業を行ったりした場合は残業代を支払ってもらうことが可能です。

一方で、通常の業務時間内に終わる量の仕事を、「家でじっくり取り組みたい」「特に急ぎではないが、納期までに余裕を持って終わらせたいから自宅で進めてしまいたい」などの理由で自発的に持ち帰った場合は、会社側からの命令がなく、労働者側の裁量で持ち帰り残業を行ったことになりますから、その時間は会社の指揮命令外で仕事をしていたとみなされるため、会社側に残業代を支払う義務はないと考えられます。


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残業代が払われない会社の特徴3選

違法に残業代が支払われない会社にはどのような特徴があるのでしょうか。以下では、残業代の不払いが常態化している会社の特徴を3つピックアップして、それぞれについて詳しく解説していきます。

定時で打刻する習慣が存在している

会社側が残業禁止を名目として、本来の労働時間にかかわらず定時になったらタイムカードを打刻するように指示され、それが常態化している場合があります。

実態はともかくとして、記録上は残業をしていないことになるため、残業代が出ることはありません。

また、定時の打刻後にタスクが残っていてやむを得ず残業を行ったことを主張しても、「会社側としては残業の指示を出しておらず、従業員が自発的に残業した」と反論して残業代の支払いを認めないケースも存在します。

労働基準法に定められた残業代の支払義務を、残業の事実自体をなかったことにする形で免れようとしているわけですから、これは違法な行為であると考えられます。

こうしたケースに対しては、残業した事実を指摘することで、残業代の支払いを求めることは可能です。ただし、残業代を請求するためには、実際の労働時間を示す証拠を示さなければなりません。

例えば、定時以降のメールの送受信記録や社内システムへのアクセスログ、PCの動作記録などを取得しておくのがよいでしょう。また、タスクの納期や量などを証明できるメールや契約書などの資料を証拠として確保できれば、より確実に残業代を請求することが可能です。

上司が残業に関する指示や会話を行わない

普段から上司が残業に関する指示を出していなかったり、会話の中で残業に関する話題に触れなかったりする場合は注意が必要となるでしょう。

なぜならば、先述した内容とも重複しますが、いざ残業代を請求した場合、会社や上司からは残業の指示を出していない、と主張して請求を拒否される可能性があるためです。

会社によっては規則で「残業をする場合は上司からの指示が必要」と定めている場合もあり、この規則の存在を根拠に「残業をしたのは従業員の自主的な判断によるもの」と主張する場合もあります。

会社側が残業を禁じているにもかかわらず、従業員が自分の判断で残業をしたとなれば、残業代の支払い義務を認めさせることは難しいかもしれません。

しかし、タスクの量が膨大で残業をしなければ片付かないものであったり、会社や上司から明確な指示がなくとも、暗黙のうちに残業を認めていたりする場合には、残業代の請求を認めさせることが可能です。

残業を行っている現場に上司が居合わせても、残業を行うこと自体について注意や指導がなかった点を指摘したり、タスクの量を示す証拠を示して残業せざるを得ない状況だったことを明確に示したりするとよいでしょう。

店舗責任者を管理職扱いにしている(=名ばかり管理職)

残業代が支払われないケースの説明でも触れましたが、残業代の請求を行った従業員が管理職であることを理由に、残業代の支払いを拒否するケースがあります。

労働基準法によれば、従業員が「管理監督者」の立場にある場合、残業代の請求を行うことができません。多くの企業では、管理職以上を管理監督者と定めており、管理職に就いた従業員には法定労働時間外の割増賃金について、支払いを行わないようにしています。

しかし、労働基準法が定める管理監督者の定義は、「経営者と一体的な立場にある労働者」です。

これに該当するかどうかは、経営方針の決定にどれだけ関与しているか、人事に関する権限の有無、労働時間や業務量についての裁量の有無、地位にふさわしい待遇の有無などを確認した上で総合的に判断されます。

よって、「課長」「マネージャー」「係長」「リーダー」などの肩書きだけでは、必ずしも管理監督者と認められるわけではありません。また、仮に管理監督者の立場にあったとしても、深夜労働や休日労働については割増賃金を支払ってもらうことが可能です。

会社側が店舗責任者に対して「店長」の肩書きを与えたり、平社員に対して「マネージャー」や「リーダー」などの肩書きを与えて、労働基準法における管理監督者であることを主張し残業代を支払わないという事例は少なからず存在します。

しかし、先述したように肩書きを持っていても、会社の経営方針の決定に関与していなかったり、労働時間や業務量が会社の管理下に置かれていたりする場合は、管理監督者としての実態が伴わない「名ばかり管理職」となっている可能性が高いです。

従業員が名ばかり管理職である場合は残業代の支払いを行わなければならないため、肩書きを理由に残業代の支払いを拒絶された際には管理監督者としての実態が伴っていないことを根拠に残業代を請求するのが有効と考えられます。


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残業代を受け取るために必要なこと

本来残業代が支払われるべき状況にありながら、残業代の支払いが行われていない可能性があったり、明らかに違法な残業代の不払いが行われていたりする場合の対処法はあるのでしょうか。以下では、支払われていない残業代を受け取るための方法について、順を追って解説します。

本来残業代が支払われる状況にあることを示す証拠を集める

まずは、残業代が支払われるべき状況であることを証明するために、証拠を集めておきましょう。

タスクに関するメールや指示書、社内規則、給与規定、定時を過ぎた後に送信したメールなど、残業を行っている事実や残業を余儀なくされている状況などを証明する証拠を可能な限り用意することをおすすめします。これらの証拠は、以降の手順をスムーズに、かつ確実に進めていく上で非常に役に立つ武器となるのです。

労働基準監督署に通告する

証拠が揃ったら、まずは労働基準監督署に残業代の未払いが行われている旨を通告しましょう。通告が行われた結果、残業代が支払われるべき状況にあると認められれば、立入検査などの調査を行った上で、会社に対して指導を行ってもらえる、もしくは是正勧告を出してもらえる可能性があります。

ただし、労働基準監督署には多くの相談や通告が寄せられており、必ずしも労働基準監督署が動いてくれるとは限りません。

この時に役に立つのが、先述した証拠です。残業代の未払いが行われていることを明確に示すことができれば、労働基準監督署が動くべきであると判断してもらえる可能性は大きく上がります。

なお、未払いとなっている残業代の回収は労働基準監督署の管轄外である点に注意しましょう。労働基準監督署は、会社に労働基準法を守らせることが主たる役割であり、違反行為に対する指導や是正勧告以上のことはできません。

労働基準監督署による指導、是正勧告によって、会社が残業代を支払うように間接的に促す形で対応が行われることになります。

会社側は是正勧告を受けた場合、労働基準監督署に対して是正報告や改善報告を行わなければなりません。ここで未払いの残業代を受け取ることができれば問題はありませんが、指導や是正勧告が行われたにも関わらず、会社が残業代の未払いを続ける場合は次のステップに移りましょう。

ちなみに、労働基準監督署の調査と、是正勧告を受けた事業所からの是正報告を受けた結果、極めて悪質な事態であると判断された場合は、労働基準監督署から検察官へ送検されることになります。

この場合は刑事事件として取り扱われ、最終的に会社側は罰則を受けることになるでしょう。残業代未払いに対する罰則は、6か月以内の懲役、または30万円以下の罰金です。罰則を受ける対象は違反した会社や経営者となりますが、従業員に直接指揮命令を行う上司が罰則を受けるケースもあります。

労働問題に強い弁護士に相談する

労働基準監督署からの指導や是正勧告を受けてもなお、会社が残業代を支払わない場合は、弁護士に相談しましょう。

会社との残業代支払いに関する交渉を行ったり、民事訴訟や労働争議を提起して残業代を回収したりするには、弁護士の力を借りるのが確実です。この時にも、先述した残業代の未払いに関する証拠は武器となります。証拠の存在によって、弁護士が交渉や訴訟を有利に進めることができるからです。

なお、弁護士を探す上では、労働問題に強いかどうかを弁護士選びの基準にすると良いでしょう。労働争議を解決した実績をホームページ上で公開していたり、口コミで労働問題に関する評判が良かったりする弁護士を探すことをおすすめします。

また、無理に遠方の弁護士を頼るのではなく、なるべく住んでいる地域で活動している弁護士を探すようにしましょう。というのも、弁護士に依頼する際には直接面談を行った上で依頼することになるからです。遠方の弁護士を頼るとなると、スケジュール調整も難しくなりますし、交通費もかかります。

相談の際には予約が必要となりますので、事前に電話で予約を入れておきましょう。1回の面談時間は限られていますから、相談前に要点を整理したり、必要となる資料を可能な限り全て持参するのがおすすめです。

また、相談にあたって事前に弁護士から用意してほしいものが指示されているならば、その指示に従ってください。実際の相談にあたっては、可能な限り正確な情報を伝えるようにしてください。弁護士が正確に状況を把握するためには、相談者の話が正確なことが大前提となります。

ちなみに、弁護士費用については、通常は着手金や成功報酬を一括で支払うことになります。しかし、法テラスの「民事法律扶助」を利用することで費用を立て替えてもらい、後から分割払いの形で償還していくことが可能です。

まとまったお金が手元にない場合は、法テラスを利用することも視野に入れておくと良いでしょう。ただし、前提として弁護士が法テラスの契約弁護士でなければ民事法律扶助を受けることはできません。

法テラスでは無料の法律相談も実施しているため、法テラスで法律相談を行った上で、相談に乗ってくれた弁護士に依頼するのが最も確実な方法と言えるでしょう。

弁護士を通じて残業代の請求を行う

弁護士に解決を依頼した場合、以降は弁護士が依頼者の代理人として動くことになります。残業代の支払い交渉をする場合も、交渉の場に立つのは弁護士となりますから、従業員が直接会社と交渉を行うよりも精神的な負担は軽減されることでしょう。

また、交渉に際して必要な書類や資料などの提供を弁護士から求められることがあるため、その際には指示に従ってください。

なお、弁護士に依頼したことが知られて会社や上司から嫌がらせを受けたり、残業代とは直接関係のない無理難題を要求されたりする場合もあります。

その場合は無理せずに担当弁護士に相談をするようにしましょう。この段階で残業代が無事支払われれば問題は解決ですが、もしも弁護士を通じた請求にも応じない場合は次のステップに移ります。

法的手段を講じる

弁護士を通じて残業代を請求しても会社側が支払いに応じない場合は、いよいよ法的手段を検討することになります。この時、労働者側が取ることが可能な法的手段は、「労働審判」と「民事訴訟」の2つです。どのような手続きなのか、以下でそれぞれ解説します。

労働審判は、事業者と従業員の間で起きた労働問題について、労働審判官1名と労働審判員2名が審理し、迅速かつ適切に解決を行う裁判所の手続きです。

3回以内の期日で審理が行われ、その中で会社側と従業員側双方の言い分を聞き、和解を目指します。この方法は迅速かつ柔軟な解決を目指し、なおかつ手続きが簡単に済むというメリットが存在しますが、一方で和解に至るには会社側が審判の内容に同意しなければなりません。

民事訴訟は、裁判を起こして事業者と従業員の間で問題について争う手段となります。裁判所が出した判決には強制力がありますから、勝訴すれば会社の意思に関わらず残業代を支払わせることが可能です。

ただし、その分手続きは複雑になりますし、時間もかかります。いずれか一方が判決内容を不服として控訴が行われることになれば、さらに問題解決が長期化するでしょう。

いずれも一長一短の手段ですが、まずは労働審判で和解を目指し、会社側が労働審判に応じない場合は民事訴訟を提起する、という流れになると想定されます。

とは言え、ケース次第では労働審判での解決が難しく、民事訴訟を即座に提起したほうが確実であると判断できる場合もあるため、どのような手段で解決を行うかについては、弁護士の判断を仰ぎましょう。

また、労働審判や裁判を少しでも有利に進めるためにも、先述したように残業代未払いの証拠はしっかりと集めておくことをおすすめします。

なお、未払いの残業代については、程度の悪質さや未払いとなっている期間に応じて、付加金や遅延損害金が上乗せされた形で支払われることになります。

付加金は残業代が支払われていない状況が悪質であると認められた場合、本来の残業代と同額の範囲までペナルティとして支払いを命じられる金銭です。

遅延損害金は、金銭債務について支払いが遅れた場合にその期間に応じて追加で支払う金銭を指します。退職金の遅延損害金は、在職中の場合は年3%、退職済みの場合は年14.6%の利率となります。細かい数字を覚える必要はありませんが、退職済か否かで利率が異なることは覚えておきましょう。


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