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パワハラを訴える5STEP。有効な証拠の集め方やパワハラ被害に該当するケースも紹介

社会に出て働き始めると仕事のやりがいや楽しみに気付くこともありますが、人間関係のトラブルに悩まされるという人も少なくありません。特に自分より立場が上の人から受けるいやがらせ、いわゆる「パワハラ」はしばしばニュースでも取り上げられて話題になっています。自分の身を守るためには、自分で出来ることをしっかり把握しておくことが大切です。今回はパワハラに該当するケースや、実際に訴える際の流れを解説します。

パワハラとは?

パワハラとはパワーハラスメントの略称であり、主に仕事に従事する職場において問題視されています。上司・先輩・同僚など周囲から圧力を受けているように感じても、それがパワハラに該当するのかどうか判断出来ないという人も多いです。

一見抽象的に思われがちなパワハラの概念ですが、実際には明確な定義が存在します。

厚生労働省ではパワハラについて職場で「優越的な関係を背景とした言動」「業務上必要かつ相当な範囲を超えたもの」「労働者の就業環境が害されるもの」という、3つの要素を満たす行いや振る舞いであるとしました。

では具体的にどういったケースがパワハラに該当するのか、それを以下に列挙して紹介していきます。


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パワハラと認められるケース

パワハラは厚生労働省によって以下のような6類型にカテゴリー分けされており、自分が置かれている状況を当てはめて該当するか否かを判断すると分かりやすいです。1~6のいずれか1つにでも心当たりがあれば、パワハラとして認められる可能性があります。

身体的攻撃

もしも目上の人間から殴る・蹴るといった暴力を受けていたらパワハラ認定される可能性が高いです。故意に暴力行為を働いた場合を想定しているため、アクシデントや事故によって結果的に怪我をさせられたという場合はパワハラに該当しません。

こぶし・手のひら・足といった身体の一部を用いた暴力行為以外では、物を投げつけられた・丸めたポスターで叩かれたなどのケースも身体的攻撃のパワハラに含まれるので覚えておきましょう。

状況や程度にもよりますが、相手の身体を大きく・強く揺さぶる行為もパワハラと見なされる可能性があります。

精神的攻撃

誰かの言葉によってひどく精神的な苦痛を感じたのであれば、それもパワハラの代表的なケースです。

しかし一口に精神的苦痛と言っても、どんな内容を不愉快に思うかは人それぞれと言えます。抽象的で判断が分かれがちなポイントですが、一般的には次のような内容であればパワハラとして認定される事例が多いです。

パワハラ事例

上記が精神的苦痛のパワハラとしてよく知られているパターンですが、注目したいのは「メール」や「無視」といった口頭以外の方法も含まれているという点です。

相手を故意に辱めたり精神的に追い詰めたりしようという意図が見られれば、言葉に限らずパワハラの対象になり得ます。ただし、業務上の大きなミスや再三の遅刻・無断欠席など明らかに自分にも非がある場合は判断が分かれる可能性があるので注意しましょう。

人間関係からの切り離し

従業員配置の決定権を持つ管理者が、業務上必要ないにも関わらず特定の人物を孤立させる行いもパワハラの一種です。例えば「長期間にわたって別室作業を強制する」「繰り返し自宅研修を命じる」といったケースが該当します。

また、職場の人間複数人で示し合わせて特定の人物を無視するといった行いも、人間関係からの切り離しとして見なされる可能性が高いです。

意図的に会話から省く他にも、懇親会や歓送迎会など通常従業員全員に参加が呼びかけられる席に声をかけないというのも危険信号となります。

注意しておきたいのは、新入社員や新しく配属された人員に対しては個別に研修などを行うこともあるという点です。業務上の必要に応じて短期的な個別業務や研修に従事させる場合は、基本的にパワハラには該当しません。

過大な要求

多くの職場では上司が部下に指示を出し、適切な人員配置で仕事を回していくのが基本です。しかし特定の従業員に対して1人では明らかに完遂出来ない業務内容を押し付ける、というパワハラも存在するので注意しておきましょう。

スキルや知識に見合わない仕事を任される、明らかに1人分ではない業務量を押し付けられるといったケースがこれに該当します。さらに言えば、本来の業務に直接関係のない肉体的苦痛を伴う雑用を割り当てる行為も立派なパワハラです。

例えば事務職の従業員が倉庫整理や草むしりばかりを強要されていれば、十分パワハラとしての条件を満たしていると言えます。

肉体的苦痛を伴わなくても、お茶くみ・パシリ・マッサージなど頻繁に私的な雑用を押し付けていればパワハラです。ただし、従業員のスキルアップを目的として普段より多少負担の大きい業務を割り振ることは過大要求によるパワハラにはなりません。

過小な要求

過大な要求とは逆に、従業員の能力に見合わない過小な要求もパワハラになるので留意しておきましょう。

このパターンは有能な人材に対して相応の立場や業務を割り振らず、簡単な仕事に従事させ続けたり閑職に追いやったりといったケースが該当します。

考えようによっては「楽が出来る」と捉える人も居るかもしれませんが、過小要求の状態が続いている限りその人は仕事が評価されず昇進・昇給の可能性が低くなると言えるでしょう。

また、仕事に対するやりがいを奪うことにも直結するため、遠まわしに退職させようとしている事例もあるのです。

とは言え事業内容によっては繁忙期と閑散期の差が激しく、シーズンによる業務量の変動が大きいという場合もあるでしょう。閑散期の対応として、一時的に有能な人材に簡単な業務を割り当てるケースもあるので注意が必要です。

個の侵害

従業員のプライバシーを侵害する行いがパワハラとして認定された事例も多数あります。職場であっても個人のプライバシーは守られるべき権利であり、企業や管理者が安易に侵害することは許されていません。

特に「個」としての生き方が重要視されるようになった現代社会において、プライバシーは取り分けデリケートな分野として扱われています。分かりやすい個の侵害例には、次のようなものがあるので把握しておきましょう。

プライバシー侵害例

パワハラ被害を訴えるまでの流れ

私たちはパワハラ被害を訴える場合、一足飛びに訴訟を起こすのはおすすめしていません。訴訟には様々な手続きが必要となり、それ相応の時間と労力が必要になります。

パワハラによって疲弊した心身には負担も大きいため、訴訟はあくまで最終手段と考えておくのが良いでしょう。実際、パワハラを解決するための方法は1つではありません。

適切なプロセスで進めていけば、訴訟に至る前にパワハラ被害を解決出来る可能性もあるのです。ここからはパワハラ被害を訴えるまでのプロセスを解説していきます。

証拠を集める

パワハラ被害を止めるためには、まず最初に何よりも「証拠」を揃えておくことが大切です。パワハラは職場という狭く透明性の低い空間で発生する問題となります。

そのため、社内の誰かや外部機関に相談しようにも証拠がなければ事実関係を証明することが出来ません。

特に問題解決の場が法廷まで持ち越されるケースでは、どれだけ多くの有効な証拠を集められたかが勝敗を大きく左右します。パワハラにおける具体的な証拠は、以下のものを参考にしてみてください。

音声の録音データ

パワハラに関わる証拠の中でも、現場で録音された音声データは特に有効性が高いものとされています。これは音声の内容からパワハラの実態を把握しやすく、肉声は偽造が難しいためです。

録音出来た内容にもよりますが、基本的にはパワハラの6類型すべてに対応出来るポテンシャルを秘めています。スマホのレコーダーでも録音可能ですが、出来れば音質の良い専用のボイスレコーダーを用意しておきたいところです。

ペン型レコーダーのように忍ばせやすく、相手に録音が悟られにくいものが良いでしょう。なお、パワハラの言質を取る為に相手を挑発すると無要なトラブルに発展する可能性もあるので、自分自身は普段通りに振る舞うよう心がけてください。

「録音した日時の記録」「パワハラ該当部分は無編集」「録音中に加害者の名前を口にしておく」などのポイントを押さえておくと、証拠としての有効性が高まります。

動画や画像

パワハラを受けている現場の動画、あるいは画像などがあれば有用な証拠として機能します。オフィスや店舗に防犯カメラが備え付けられているようであれば、担当部署に掛け合って映像を提供してもらえないか交渉してみましょう。

会議室や休憩室など、ある程度決まった場所でパワハラを受けるような場合は、自分で予めカメラを設置しておくという方法もあります。

ただし加害者よりも先に入室して仕込んだり、パワハラの現場を上手く画角に収めたりなどハードルは高めです。暴力行為によるパワハラで負傷したら、患部をスマホのカメラで撮影して画像を残しておくのが有効と言えます。

メールやSNSのやり取り

IT化が進んでいる現代ビジネスシーンでは、社内の人間とコミュニケーションを取る際にもメールやSNSを使用する機会が多いです。

特に単独犯によるパワハラの場合は周囲に悟られるリスクも低いため、個人的にやり取り出来るメールやSNSで攻撃してくるというケースも珍しくありません。

不快な思いをする文面なので消してしまおうという気持ちをグッとこらえて、証拠として保存しておくようにしましょう。メールであれば誤って削除してしまわないように保護しておくと安心です。

SNSの場合は相手がリスク回避のために都度メッセージを削除するという可能性も考えられます。加害者を逃さないためには、メッセージを確認した段階でスクリーンショットや写真で文面と相手の名前が分かるように保存しておくのが効果的です。

被害者の日記やメモ

パワハラの事実が何らかの証拠によって証明出来たとしても、それまでの経緯がハッキリしなければ事態の根本を解決しにくいこともあります。

そんな時に役立つのが、パワハラを受けた被害者である自分自身の日記やメモです。パワハラを受ける前後でどのような変化が生じたのか、パワハラを受けた時の心理的状況はどのようであったのかを記しておくと後々話を有利に進めやすくなります。

「パワハラの日時」「加害者」「パワハラの内容」「自分の精神状態の変化」などをまとめておくようにしましょう。日記やメモは単独でパワハラを証明することが難しい側面もあるので、他の証拠と合わせる補助的な材料として活用するのがベターです。

周囲の人間による証言

誰かの目に付く場所でパワハラを受けたら、目撃者から証言を集めることも視野に入れておきましょう。加害者が単独の場合は周囲からの理解も得やすいですが、職場の人間と示し合わせてパワハラをしかけてきている場合は逆効果になる可能性もあるので注意が必要です。

証言も単独での立証能力が低いと言われているため、基本的には音声・動画・画像といった強い証拠を補助する意味合いが強いと言えるでしょう。

重要なのは、自分が用意した証拠と証言がしっかり噛み合っているかどうかです。他に有力な証拠がなく証言に頼る場合は、パワハラの時系列や日時を正確に書き起こしておきましょう。

医師からの診断書

パワハラの結果として怪我や精神疾患を負ったのであれば、医師からの診断書が有力な補助証拠となります。

直接的にパワハラの事実を証明するものではありませんが、パワハラから近い日時の診断書があれば因果関係を証明するのは難しくありません。

証拠としての効力を高めるためには、診断してもらった担当医にパワハラの内容を伝えてカルテに起こしてもらうのがおすすめです。パワハラの事実を第三者に明かすのは勇気が要るかもしれませんが、自分の未来のためには少しでも協力者を集めることが重要になってきます。

社内の相談窓口に相談する

パワハラを解決するためのポイントは、1人で抱え込まないことです。パワハラによって心身を圧迫されている状態では適切な判断が難しい場面も多く、協力者と相談しながら進めた方が自身の負担が軽く済みます。

いきなり外部機関に相談するよりは、まず事情を説明しやすい社内で相談先を探してみるのが良いでしょう。社内での主なパワハラ相談先は以下の通りです。

同僚

パワハラの相談先としては、まず気の許せる同僚が候補として挙げられるでしょう。場合によっては実はその人もパワハラを受けていて、共同で被害を訴えるという流れになる可能性もあります。

同僚に協力してもらえばパワハラ現場の動画撮影や証言の提供など、重要な証拠を集めやすくなるでしょう。

自分がイメージしている証拠集めのアプローチ方法について相談してみてください。ただし、その人が加害者と関わりが深い場合は相談先には向いていないので注意してください。

上司

社内の力でパワハラを解決するためには、ある程度の権限を持った人を頼るのが効果的です。身近な存在としては日々の業務を管理している上司が挙げられます。

しかし、自分の直属の上司がパワハラの加害者になっているというケースは比較的多いです。この場合、有力な相談先は加害者をよく知る他部署の上司や、加害者のさらに上の上司となります。

管理者の協力を得ることが出来れば、問題解決に必要となる今後の手続きをスムーズに行えるようになるでしょう。パワハラの内容を正確に伝えた上で、配置変更などで穏便に解決出来ないかを模索してみてください。

人事部

人事部は社内における人員配置や人材評価を司る部署であり、業務上必要であれば人間関係の問題についても解決に取り組むことがあります。関係各所との連携も取り持ってくれるので、味方にすれば心強い協力者となるでしょう。

同僚や上司などの個人ではなく組織として協力してくれることから、第三者視点の客観的なアドバイスも期待出来ます。必要であれば自分もしくは加害者の部署異動など、社内で比較的大きい動きを取ってもらえるように相談しましょう。

労働組合

比較的規模の大きい企業に勤めているのであれば、労働組合を頼るのもおすすめです。労働組合とは同じ企業で働く従業員で構成される組織であるため、従業員目線で親身になって問題解決に取り組んでくれます。

同一職種や同一産業といった広い範囲の労働組合も存在しますが、基本的にパワハラ問題の解決であれば自社の労働組合を利用するのがスムーズです。

労働組合は従業員と企業の間に入って交渉を行ってくれるため、事を荒立てずなるべく当事者間で解決したい場合によく用いられます。加害者に改心して欲しい、企業として改善や再発防止に努めて欲しいといった要望は労働組合に相談してみましょう。

パワハラ相談窓口

パワハラは社会的な関心が高く、日本政府も優先度の高い懸念事項として扱っています。事実、2020年の6月にパワハラ防止法が施行されてから2年後の2022年4月には、ハラスメント相談窓口の設置が中小企業においても義務付けられました。

企業にもよりますが、ハラスメント相談窓口は専門的な知見を持ったスタッフを擁しているのが一般的です。社内での解決方法提案はもちろんのこと、法律的なアプローチや事実関係の確認など幅広くサポートを行っています。

また、メンタルカウンセラーを配置しているケースも多いので、パワハラ解決と自身のメンタルケアを同時進行したい人にもおすすめです。パワハラによって受けた精神的苦痛を打ち明けて、必要に応じた対策を講じてもらいましょう。

労働局「総合労働相談コーナー」を活用する

上記のような社内の相談先を活用してもパワハラ問題が解決しない場合は、外部の専門機関に相談することになります。外部機関にも色々種類がありますが、まずは労働局の「総合労働相談コーナー」を利用してみてください。

労働局とは各都道府県に設置されている厚生労働省の管轄組織です。つまり、労働局は必要に応じて企業に対して行政指導などの強い権利を行使することが出来ます。

総合労働相談コーナーでは労働者からの様々な相談を受け付けていますが、特に賃金引き下げ・パワハラ・セクハラといった問題に強いです。

公的機関となっている総合労働相談コーナーは無料で利用出来るようになっており、事前予約も不要です。局内での面談を行っている他、現地まで行くのが難しい・対面相談に抵抗感があるといった場合は電話窓口での相談にも対応しています。

各分野の専門家に相談出来るところも多いので、細かい事情も遠慮なく打ち明けてみてください。

ただし、総合労働相談コーナーはあくまで解決策の提案や関係各所への取次ぎを行う機関であるため、相談した時点で直接的な解決に乗り出してくれる訳ではないという点に十分留意しておきましょう。

相談受付時間は各局によって異なり、土日祝日は閉まっている場合が多いので気を付けてください。

労働審判で訴える

総合労働相談コーナーで提案された解決策でもパワハラが改善しないようであれば、地方裁判所の力を借りて労働審判と呼ばれる手続きを行いましょう。

労働審判は原則として非公開で行われる手続きであり、労働審判官1名と労働審判員2名によって構成される労働審判委員会が当事者の間を取り持って問題解決を目指します。

原則として審判にかける期日は調停3回分です。原告・被告ともに現地で参加するのが基本的なスタイルですが、テレビ会議によるリモート参加も認められているので状況に応じて活用しましょう。

労働審判は通常の訴訟とは異なる形式であるものの、法的機関の力を借りた手続きであることには変わりありません。調停ではパワハラの事実やそれによる影響を証明するための証拠、さらに話を有利に進めるための交渉術が重要になる場面もあります。

したがって、労働審判を弁護士に依頼するというパワハラ被害者も少なくありません。心身に余裕がない状態であれば、多少の費用をかけても専門家に依頼した方が良い結果になるケースが多いのです。

原則的には当事者間の和解が目的ですが、歩み寄りが難しいようであれば労働審判委員会による審判が下されます。不服の申し立てがあれば、次はいよいよ民事訴訟です。

民事訴訟を起こす

パワハラ解決の最終手段となるのが民事訴訟です。ここまで来ると労働者個人での対応は難しくなるので、弁護士など法律の専門家に頼るのが基本です。

弁護士と言ってもそれぞれ専門分野が異なるため、パワハラ問題の実績が多い法律事務所に依頼するようにしましょう。

民事訴訟では一般的に損害賠償請求や労働災害認定の有無が争点となるケースが多いです。パワハラの内容によっては傷害罪・名誉毀損罪・脅迫罪などが適用されることもあります。

誰かを裁くためには、それに足る証拠が必要です。パワハラ解決の初期段階である証拠集めは、最終手段の民事訴訟でも大きな役割を果たすことになります。

パワハラ問題の事態がどれだけ大きくなるかは誰にも予想出来ません。問題解決を決意した最初の段階で、可能な範囲の証拠はしっかり集めておくように心がけましょう。

また、民事訴訟になれば控訴によって裁判が長期化する可能性も考えられます。弁護士費用や精神負担などを鑑みて、慎重に検討してみてください。

転職して環境を変えることも視野に入れよう

パワハラ問題は早期段階で解決出来るのがベストですが、相手の出方次第では長期化の様相を呈します。中には「訴訟までいくと大掛かりで負担が大きい」「解決に長い時間をかけたくない」といった心配事を抱える人も多いでしょう。

パワハラには加害者との間で解決・和解を図る他にも、自身が転職するという選択肢もあります。職場を変えてしまえば加害者との接点もなくなるため、心機一転で仕事に取り組めるようになるでしょう。

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