部下からのパワハラ「逆パワハラ」への6つの対応方法
パワハラは「上司から部下に対して行われるもの」と思われがちですが、部下から上司に対するパワハラ、いわゆる「逆パワハラ」と呼ばれるケースも存在します。部下に注意をした時に「パワハラとして訴えてやる!」と脅されたり、故意に命令無視を繰り返されたりすれば、それは立派なパワハラとなるのです。今回は部下から上司に対して行われるパワハラにどう対処すれば良いのかについて見ていきましょう。
部下からのパワハラ「逆パワハラ」とは?
まず大前提として、部下からのパワハラとは何なのかを知っておきましょう。
そもそもパワハラとは、厚生労働省によれば「優越的な関係を背景とした言動であって、業務上必要かつ相当な範囲を超えたものにより、労働者の身体的・精神的苦痛をもたらす、もしくは就業環境が害されるもの」と定義されています。
この定義のうち「優越的な関係」として代表的なものが「上司から部下」、「発注元から発注先」といった関係性です。
ポジションの上下関係や金銭的な関係における優位性を振りかざすことが、パワハラの主な原因と言えるでしょう。とは言え、あくまでこれは一例であり、「優越的な関係」が成立しうるケースは様々です。
例えば、「配属されたばかりの上司」と「現場で長年経験を積んできた叩き上げの部下」という状況を想定してみましょう。
この場合、上司は部下に部署の状況や仕事の進め方、慣習について聞かなければ仕事ができない状況にあります。つまり、部下の協力を得なければ上司は円滑な業務遂行が不可能となるのです。
その時、部下は上司に対して「優越的な関係にある」と言えるでしょう。もしもこの部下が上司からの指示を無視したり、非協力的な態度を取ったりした場合、上司の就労環境に影響が出ますから、パワハラが成立してしまいます。
また、会社組織は基本的に上司1人に対して部下が複数人つくことがほとんどですが、その部下が全員上司に対して反旗を翻した場合、部下たちは単純に人数で「優越的な関係にある」と言えます。
上司が明らかに無謀な業務指示を出している、上司の指揮能力に問題があるなどの場合に行われる諫言や抗議の範疇を大きく逸脱して上司の就労環境を害している場合は、パワハラと認められることになります。
このように、厚生労働省の指針に従って考えた場合、状況次第では部下の言動もパワハラと認められるケースは少なからず存在するのです。
いわゆる「逆パワハラ」と呼ばれるこの状況は、上司が部下を指揮するという会社組織の大原則を根底から揺るがし、組織の秩序が崩壊する危険性を孕んでいるため、早急かつ適切に対応をしなければなりません。
部下からのパワハラになる事例
以下では、部下からのパワハラになる事例について、実際の裁判例なども交えながら「どこがパワハラに該当するのか」「何が原因でパワハラが発生してしまったのか」などを具体的に見ていきましょう。
部下から上司に対する暴言や暴力が日常的に行われ、上司が心身を傷つけられた
部下が「お前の命令には従わない」「お前が無能なのが悪い」などと上司に対して暴言を浴びせたり、部下が上司に対して胸ぐらをつかんだり足を蹴ったりといった暴力が行われたりすることが繰り返し発生し、上司が心身を傷つけられている場合はパワハラが成立します。
ポイントとなるのは、「日常的に行われている」という点です。「ついカッとなって暴言を浴びせてしまった」「衝動的に胸ぐらをつかんでしまった」といった、その場限りの暴力や暴言はパワハラとは認められません。
常習的に暴言や暴力が繰り返されていることがパワハラと認められるかどうかの判断の分かれ目となるため注意しましょう。
このケースは、主に部下が上司に対して経験や能力で優れている場合に発生することが多いです。
IT業界など技術の発展スピードが早い業界においては若い人材の方が適応力が高いため、部下が上司に対して能力で上回ることも少なくありません。
また、年功序列制度の崩壊によって部下よりも上司が年下になるというケースも増え、上司よりも部下の方が現場経験を豊富に持つという状況も多くなりました。
こうした状況の中で、能力や経験が劣る上司を侮ったり、上司の能力や経験が不足していることに苛立ちを覚えたりする部下が、上司に対して暴力や暴言といったパワハラを行うようになっていったのです。
平成8年の事件では、上司に対する逆パワハラがあったとして解雇処分となった部下が不当解雇であるとして訴訟を提起しましたが、裁判所は部下が上司に対して「日常的に」暴言を浴びせたり、大声で恫喝していたりしたことを認め、解雇処分は妥当であるとしました。
このケースはパワハラをした当事者である部下が原告となった訴訟でしたが、被告となった会社の解雇処分の正しさを認める形でパワハラがあったことの認定が行われています。
集団での嫌がらせ行為
部下が集団で上司に対して嫌がらせを行うケースも逆パワハラとされることがあります。上司は一人ひとりの部下に対しては優位な立場にあると言えますが、集団になった場合は立場が逆転し「部下が優越的な立場にある」と認められるのです。
部下全員で上司のことを無視して孤立させたり、上司に対して集団で悪口を言ったりすることが横行している場合は、パワハラとして認められます。
ただし、部下が集団で命令を無視するという状況に関して、そもそも上司側がパワハラ的な命令を下していた場合、部下たちが命令を無視することはパワハラから身を守るためにやむを得ず行っていることと判断できますから、逆パワハラは成立しない点に注意しましょう。
このパワハラが発生する原因としては、上司側にマネジメント力が不足していたり、部下の不満をコントロールできなかったりすることなどが挙げられます。
上司の能力不足などによって部下からの信望が薄い、もしくは何らかのミスで部下からの信用が失墜したなどの要因で、部下のコントロールができなくなった状況と言えるでしょう。
発端は1人の逆パワハラだったのが、周囲を同調圧力によって巻き込んで人数が膨れ上がっていったというケースも存在します。
集団での嫌がらせ行為がパワハラとして認められたケースとして、平成22年の大阪地裁における裁判例が存在します。
この裁判では、とある企業の指導役を勤めていた原告が、部下や同僚から集団で嫌がらせを受けて精神疾患を患い、長期にわたる休職の後解雇となった事件が取り扱われました。
具体的には部署内の勉強会に参加することに苦言を呈されたり、自分の陰口が女性社員の間で密かに交わされていたり、他の支社の同僚から悪口や嫌がらせを受けたりして、うつ状態になってしまったのです。
精神科では「うつ状態・不安障害」と診断されましたが、裁判ではこの診断結果が業務に起因するかどうかが争点となり、上記の状況が逆パワハラであり疾患は業務起因性が存在するということが認められる判決が下されました。
虚偽のハラスメントの捏造と訴え
本当はハラスメントが発生していないにも関わらず「ハラスメントを受けた」という虚偽の訴えを行った場合も逆パワハラとなります。
パワハラを訴えた側が「被害者」となりますから、加害者として扱われる上司よりも優越的な立場にある上に、何らかの処分が下されてしまえば上司の労働環境を損ねるという実害も発生し、虚偽である以上「業務上必要かつ相当な範囲」から逸脱しているため、パワハラの要件を満たしているのです。
ただし、単独の部下が虚偽のハラスメントを訴えた場合は立場の優越性が認められずパワハラではないとすることもありますが、パワハラであるなしのいずれにせよ、上司の名誉を毀損する違法行為であることに変わりはないため、高確率で社内処分の対象となるでしょう。
故意にハラスメントを捏造して訴えを行った場合、部下が上司に対して何らかの不満を持っていたことが原因と考えられますが、「誰が見てもハラスメントでは無いのに、その部下がハラスメントと決めつけた」ケースの場合、部下が「パワハラについて正しい理解をしていない」という可能性もあります。
そのため、セミナー等でパワハラに対する正しい知識を身に着けてもらうことで予防することが可能です。
実際の裁判例としては、平成22年に東京地方裁判所において、原告が上司に対して度重なる逆パワハラを行い解雇されたことを不当であるとして勤務先の企業を訴えた事例が存在します。
裁判の中で原告が虚偽のセクハラを訴えていたことや、架空のハラスメントを理由に業務拒否を行っていたことなどが明らかとなり、結果として企業の解雇処分は正当性があるとして原告の訴えを退けました。
SNSやビラなどを利用して上司を中傷し、名誉を毀損する
直接上司に対して不満を言うのではなく、SNS・口コミサイト・ビラ・手紙などの手段を用いて上司を中傷し悪評を広めて名誉を毀損するという方法で、逆パワハラが行われるケースもあります。
特に昨今はSNSや口コミサイトを通して悪評が広まりやすく、中傷内容を信じたユーザーが気分を害し会社をブラック企業として糾弾するなどの炎上状態となり、上司本人のみならず会社自体の評判が悪くなり、取引中止などの実害が発生する危険性すらあるのです。
上司のコントロールが効かない状況で悪評を広めるという点で部下側に優越性がある上に、業務上必要かつ相当な範囲を大きく逸脱した行動ですから、逆パワハラの要件は満たしていると言えるでしょう。
部下がこうした行動に出る背景としては、部下が不満を溜め込んでいることが考えられます。また、不用意に個人情報等を出すなどしている場合はリテラシーの不足が原因として挙げられるでしょう。
指導や叱責を受けたり何らかの懲戒処分を下されたりしたことへの報復手段として悪評を広める行動に打って出たというケースも存在します。不満を吐き出す機会を用意する、ネットリテラシーなどについて定期的に教育を行うといった方法を取ることで、ある程度予防することが可能です。
部下からのパワハラにならない事例
場合によっては、部下からのパワハラに当たらない事例もいくつか存在します。以下では、逆パワハラが認められない事例についていくつかピックアップして見ていきましょう。
上司の業務命令に違法性が認められたり、上司がハラスメントを行っていたりした場合
そもそも上司がハラスメントをしていたり、上司の業務命令が違法なものであった場合、労働者がこれに抵抗するのは正当な権利です。
サービス残業や粉飾決算などの指示に従う必要はありませんし、上司がハラスメントを行っていた証拠が揃っていれば部下のハラスメントの訴えは正当なものとなります。
もちろん、どちらに正当性があるかを裁判で争うことになれば、違法な命令やハラスメントを行っていた上司側は非常に不利なものとなるでしょう。
このケースに関しては、ハラスメントを理由に解雇された上司がこれを不当解雇であるとして勤務先を訴えたという裁判例が存在します。
上司に対して正当な注意や指摘を行っている場合
上司の中には、遅刻を繰り返していたり服務規程に違反していたりするなど問題行動を起こしているケースもあります。
こうした問題行動に対して、部下の立場から注意をしたり苦言を呈したりすることは業務上必要かつ相当な範囲の中にあると言えるのです。
むしろ上司に対してもいけないことはいけないと毅然として告げることができるのは勇気が要ることでしょう。
もちろん、これで上司から「逆パワハラだ」と訴えられたとしても、注意や指摘が正当なものであり、人格や名誉を著しく毀損するような言動を取っているものでない限り、逆パワハラであると認められることはありません。
逆パワハラではありませんが、営業所長が不正経理を行っていたことに対して、是正するように命じられたにも関わらずこれを無視し、周囲から叱責されたことをパワハラであるとして訴えた事例が存在します。
平成21年の高松高裁で下された判決では、原告の営業所長は不正経理の是正を命じられたことを無視したために、厳しい改善指導を行うことが必要だったという事情を勘案して、営業所長の訴えを退けています。
この判例から、同様のケースで叱責が部下から行われた場合でも逆パワハラは成立しないものと考えて良いでしょう。
部下からのパワハラへの6つの対応方法
以下では、部下からパワハラを受けた際の対処法について、対処法を6つピックアップして紹介します。
部下と話し合う
まずは部下と話し合い、穏便な形で問題解決を図るようにしましょう。部下も自分の言動がパワハラであると認識していないケースも多々存在します。
双方の認識をすり合わせて誤解を解き、互いの考えをそれぞれはっきりと伝えることが重要です。
ただ部下にパワハラをしてしまったことに対する是正を求めるのではなく、部下の意見も聞き入れ、自分で改善できるものがあれば改善するように心がけると良いでしょう。
もちろん、部下がしてしまったことがパワハラである、と認識をしてもらい、今後の再発を防止するように上司として指導することも重要です。
なお、この方法はパワハラが始まってまだ日が浅いうちに行うのが効果的です。
すでにパワハラが常態化してしまいかなりの日時が経過してしまった場合には、話し合いを求めても応じてこないか、相手が開き直ってしまう可能性が高くなるため、早めに解決に向けて動き出しましょう。
部下への指導内容を残す
上司として部下に指導をしていたところ、反発した部下が「ハラスメントだ」と上司を告発、あるいは起訴する形で逆パワハラを受けてしまう可能性があります。
こうした事態に備えて、部下への指導内容をきちんと記録することが重要となるでしょう。実際、社内の問題を労働争議や裁判といった社外の機関の力を借りて解決する場合には、第三者が客観的に判断できる「証拠」を揃えることが求められます。
口頭で「こんなことがありました」と何度も訴えかけるより、きちんとした証拠を提示するほうが信用してもらえる確率が高くなります。
メールやメッセンジャーツールなどの送受信記録を残したり、オンラインミーティングの場合は通話を録画・録音したりするのが最も確実な方法です。
また、口頭で指導した内容を「指導票」や「報告書」の形で書面化するという方法もあります。
こうした記録は問題を解決する過程での証拠となるだけでなく、問題解決後に再発を防止するための資料として活用することも可能です。
上司に相談する
ハラスメント被害に悩まされている場合は、一人で抱え込まないことが肝要です。
特に逆パワハラの場合は上司という立場上、自分一人で問題の解決を図ってしまいがちですが、他の人に相談することで解決の見通しが立つことも多いため、できるだけ相談をするようにしましょう。
相談先としては自分の上長がベストです。自分よりもさらに上の立場の人間であれば、経験や地位を活かした解決策も可能となります。
大事にするのを嫌って自分で解決を図る上司も少なくありません。
しかし、部下が上司に対して強権的な態度を振りかざす「逆パワハラ」という現象自体がすでに会社の統制を揺るがす異常事態ですから、むしろ大事にして組織的に解決を図ったほうが良いとも言えるのです。
自分一人で解決することが困難だと感じたら、すぐに自分の上長に相談するようにしましょう。
相談窓口に相談する
上司以外の相談先として有力なのが、全ての企業に設置が義務付けられているハラスメント相談窓口です。
企業は従業員がハラスメントの相談をしたことを理由に解雇や減給といった不利益を被る扱いをしてはならないと定められているため、相談先として信頼できるのが最大の利点と言えるでしょう。
また、企業の顧問弁護士やコンサルタントなどが相談窓口となっているケースもあり、専門家の協力のもと最適な方法で解決を図ることが可能な点もメリットのひとつです。
もちろん、相談したことの秘密は守られることが多いですし、部下から上司に対する逆パワハラに関しても相談を受け付けてもらえますから、上司だからという理由で気後れする必要はありません。
迅速かつスマートに解決を図りたい場合には、相談窓口の力を頼るという選択肢を頭に入れておくと良いでしょう。
労働局や弁護士に相談する
集団での嫌がらせ行為が横行していたり、企業の相談窓口や上司に相談したにも関わらず状況の改善が見えない場合は、自分で労働局に相談をもちかけるという方法も一つの手です。
労働局は相談内容をもとに企業に対して調査を行い、問題があれば是正勧告を出すことで企業に解決を促します。
企業がなかなか解決に向かって動き出さない場合は、労働局に相談して外部から企業を動かすように働きかけてもらうのが良いでしょう。
また、名誉毀損や誹謗中傷などが行われており、仕事に支障が出るなどの実害が発生している場合は弁護士に相談するのも手です。
弁護士から逆パワハラを行っている当事者に対して指導や勧告を行ってもらったり、パワハラの加害者に対して慰謝料などの損害賠償を請求したりすることが可能です。
なお、労働局や弁護士に相談する場合は、逆パワハラの事実をきちんと示す証拠をできるだけ多く用意しておくと良いでしょう。
暴言の録音や精神疾患の診断書、指導票や報告書などを用意しておけば、労働局や弁護士の依頼をスムーズに行うことが可能です。
転職する
逆パワハラに耐えきれなくなってしまった場合、企業が逆パワハラの解決に対して消極的だった場合の最終手段は「転職」です。
職場環境を大きく変えてしまえばパワハラから逃れることができますし、転職によってさらなるキャリアアップの道が拓ける場合もあります。転職を行う上では転職エージェントの利用がおすすめです。
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